低炭素の新潮流を先導—菜食こそトレンディ

現代の菜食はホールフードを重視し、油・塩・砂糖を控えることで、一層食材本来の味が楽しめるようになり、栄養も完全な形で保っている。(写真の提供・レストラン「ダンデライオン」)

毎年、世界で食肉を供給するために飼育される牛や豚、鶏などの動物が排出する炭素化合物の量は、世界中の交通機関から排出される量とほとんど変わらない。日々の食事の一口一口を軽く見てはいけないし、温室効果ガスの排出削減における自分の影響力も過小評価してはならない。

【慈済の活動XSDGs】シリーズ

国連食糧農業機関(FAO)の二〇二三年の統計によると、世界で飼育される牛や豚、鶏などの家畜が一年間に排出する炭素化合物の量は、温室効果ガス総排出量のうち十二%を占める。

しかし、牧場開発のための熱帯雨林の伐採、飼料用穀物の栽培、排泄物の処理など畜産関連事業によって排出される量を合算すると、人間が肉を食べるために発生させている温室効果ガスは、世界中の輸送業による直接的な排出量に相当する。

言い換えれば、食生活を変え、栄養バランスの取れた植物性の食事を選択すれば、温室効果ガスの排出を効果的に削減し、地球の温暖化を緩和することができるのだ。

慈済は五十九年前の創立当初から、生活習慣やイベントを通じて菜食を推進してきた。その後、四大志業の集会所と病院、学校でも一律に菜食の提供を続けている。「二〇〇三年に重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が蔓延した時に、證厳法師が公に菜食を呼びかけたことが、初めての対外的な推進でした」。慈済基金会執行長室専門スタッフの邱国気(チュウ・グオチー)さんは、慈済が菜食推進を始めた歩みを振り返った。

SARSの流行は、人類が野生動物と接触し、食用にしたことが発端であった。ウイルスは人畜共通感染を通じて広まり、これを受けて證厳法師は「心を一つにして疫病を鎮めよう―五月の精進月」行動を発起し、殺生を戒め生命を護るよう呼びかけた。法師はまた、「病は口から入る」と警鐘を鳴らし、食のあり方の見直しを訴えた。

二〇〇八年、ミャンマーが熱帯サイクロン「ナルギス」によって甚大な被害を受けた際、慈済は被災地で救援活動を行い、種籾を支援として配付した。これに感謝した現地農民たちは「一日一握りの米を貯めて他人を助けよう」という活動を自主的に始めた。法師はこの善行を大いに称賛するとともに、地球温暖化の進行に強い懸念を示し、「八分目の菜食をして二分で人助け」運動を提唱すると、菜食と節約の実践を日常生活の中に取り入れるよう呼びかけた。

この呼びかけに応じ、慈済のボランティアたちは地域社会に入り、菜食推進の力をさらに強めていった。そして二〇一六年には「111世界蔬醒日」キャンペーンを立ち上げ、百十一万人を目標に掲げ、減炭・菜食行動を呼びかけたのである。

二〇二一年のコロナ禍において、證厳法師は一歩踏み込んで慈しみ深く開示した。「菜食を呼びかけ、広め、実践しなければなりません」。では、どのように説明し、どのように推進し、どのように実践していくのか。慈済基金会は、菜食推進のための専門チームを立ち上げ、その責任者となった邱さんは、こう説明した。「点から面へ、店舗から友好国際観光都市へと、一歩一歩行動を広げ、多くの人々の力を結集して共に呼びかけ、広め、実践するのです」。

家畜の飼育には大量の餌と水が消費され、排せつ物や温室効果ガスの排出が環境に悪影響を与えている。肉食がもたらす環境負荷は、菜食よりはるかに大きい。(撮影・黄筱哲)

菜食もフードデリバリーできる

オンライン統計サイト「World of Statistics」が二〇二三年に発表した各国のベジタリアン人口調査の統計によると、台湾は十三〜十四パーセントの人がベジタリアンで、インドとメキシコに次ぐ順位となっている。しかし、多くの人々の固定観念の中では、菜食は「美味しくない」、「便利でない」、「栄養がない」、「安くない」といった誤解が依然として存在している。

三年あまり前に花蓮に設立された「野菜と酸素—VO2」フードデリバリープラットフォームは、この一連の「ない」を取り除き、菜食を美味しく、便利で、栄養があり、安くすることで、菜食を始めるハードルを下げようとしている。「花蓮で有名な菜食の店に全て参加してもらい、菜食したい人や試してみたい人が、このプラットフォームから選んで注文できるようにしました」と邱さんが説明した。

しかし、フードデリバリーで発生する使い捨てごみの問題は、どう解決すればよいだろうか?

「菜食の推進は環境保全の実践の一環です。ですから、リユース食器を使うことにこだわっています」と邱さんは続けて説明した。VO2プラットフォームは、宅配サービスは行わず、指定場所で受け取ることになっている。

つまり、料理は配達員によって指定された受け取り場所に届けられ、消費者は食事後に容器を軽く洗って再びそこに戻す。その後、配達員が工場へ運び、徹底した洗浄と消毒を行って再び各店舗に配送し、次の注文に備える。このようにリユースすることで、紙コップ、紙ボウル、紙容器、割り箸などの使い捨て食器の消費を抑えることができるのである。

二〇二一年の設立以来、三十余りの花蓮のベジタリアン飲食店がVO2プラットフォームの提供パートナーとなっており、受け取り場所も慈済大学、花蓮慈済病院、静思堂に加え、花蓮県政府、環境保護局、消防局などの公的機関や民間企業にまで拡大している。

「私の妻は慈済大学に勤務しており、娘も夏休みに学校に来るので、私は病院からこちらに来て二人と一緒に食事をしています」。花蓮慈済病院研究部医学統計コンサルタントの王仁宏(ワン・レンホン)さんは、慈済大学の「食のサステナブル消費協同組合」の入り口脇にある受け取り場所で料理を受け取り、忙しい中でも家族そろって温かい食事の時間を楽しんでいる。

「注文すればここまで届けてくれるので、わざわざ外に行って食べる必要もありません。菜食するスタッフにとって、とても便利です」と王さんが称賛した。

リユースできるエコ食器を採用しているため、VO2プラットフォームに参加する飲食店は、同業者よりも多くの時間と労力をかける必要があるが、彼らには菜食への変わらない理想とこだわりがある。

「私たちの料理は種類が豊富で、十二種類ほどあります。注文に合わせた盛り付けにはかなりの時間がかかります」と自社のお弁当の品質に関して、業者の林于揚(リン・ユーヤン)さんは、自信を持って言った。なぜなら、販売して顧客に提供する料理は、家族の毎日の食事も同然なので、食材、油、調味料の厳選には非常に気を配っているからである。

軽食のヘルシーセットを主力とする業者の林鈺馨(リン・ユーシン)さんもまた、理想を掲げる人だ。実際の食べ物の色・香り・味・形を通じて、健康的な菜食を広めたいと考えている。しかし、六年前、開業直後にコロナ禍に見舞われ、経営が困難に陥った。幸いにも、慈済の「愛心商店(現・富有愛心店)」プロジェクトに参加し、慈済ボランティアのグループに紹介されたことで、経営を維持できる最低限の顧客を得ることができた。コロナ禍を乗り越え、彼女は二〇二四年末にVO2プラットフォームに加入し、その健康的な菜食理念もさらに多くの人々に知られるようになった。

VO2プラットフォームのフードデリバリーは、三年余りで十一万九千食以上を提供し、花蓮北部の花蓮市、吉安郷、新城郷などの小規模都市圏でしっかりと地盤を築いてきた。そして、徐々に花蓮南部や他県市へ拡大しており、菜食主義ではない人たちからの大量注文も見られるようになった。

「今年は台北にも進出する予定です。まず『未来マルシェ』を開催して菜食推進に関心のあるお店と知り合い、次に一堂に集まってもらい、彼らと一緒に実践していけば、今後の協力がよりスムーズになるでしょう」。と邱さんは嬉しそうに語った。

VO2菜食デリバリープラットフォームの配食業者は、再利用可能な弁当箱やドリンクカップで料理や飲み物を提供する。そのため、使い捨て容器を使用する同業者に比べて、より多くの手間と労力をかけている。

美しいプラントリウム 
嬉しい驚きの体験

「今日の菜食はとても美味しくて栄養バランスも良く、味もしっかりしていました」。台北市立復興高校の生徒の朱さんは、昼食への評価を聞かれた時、食後に自分で作ったサンドイッチを噛みしめてこう語った。生徒たちが次々と口へ運ぶ様子や、お互いにスマホで撮った写真を見せあっている時、同行していた蘇美玉(スー・メイユー)先生は、「実は子どもたちは、先ほど菜食のビュッフェを食べ終えたばかりなのに、今また美味しそうに食べているのです。ということは、この味が彼らに受け入れられているということです」と確信を込めて言った。

台北市松山駅に隣接する慈済東区連絡所の地下には、「プラントリウム(植境)」がある。複合型スペースとして、菜食のビュッフェレストラン、ベジタリアンスーパー、ベーカリー、料理教室が併設されており、来訪者はそこで食事ができるし、作り方が分からなければ学ぶことができ、食材が必要ならスーパーで購入できる。さらに、環境教育の展示エリア、静思ブックカフェ、オープン形式の講演スペースもある。二〇二三年の開業以来、大都市台北の慈済ボランティアは、この場所を積極的に活用して若者の参加を促している。

慈済ボランティアの紀雅瑩(ジー・ヤーイン)さんは、二〇二四年一月にそこで会議に参加していた時、大勢の高校生が食事をしているのに気づいたことを振り返った。「同行していた先生に聞くと、費用を提供してくれる人がいたので、校内環境保全に参加したボランティアの生徒への報奨として連れてきたのだそうです」。

十代の若者たちは、普通ならフライドチキンなどの「ファーストフード」を好むので、菜食を食べてもらうのは容易ではない。高校生がそのような縁で、「現代的な」雰囲気のある空間で菜食を楽しむ姿を見て、紀さんは感激した。そして、慈済ボランティアと学校を繋ぎ、企業の協賛を得て「共善」活動に取り組み、「持続可能な地球のために」というプロジェクトを推進することで、若者たちに菜食の素晴らしさを感じ、菜食で命を守り、大地を守ることの意義を理解してもらうことにした。

チームは、活動の開始時間をお昼に設定した。教師と生徒たちは、先ず菜食のビュッフェレストランで食事をすることで、プロのシェフが作った料理を味わえるだけでなく、生徒たちも料理教室に参加し、ヴィーガンの「ツナ卵サンドイッチ」を自分たちで作った。またボランティアが生徒たちに環境教育の新しい知識を教え、なぜ菜食で地球が救えるのかを理解してもらった。

「もし全世界の十億頭の牛が一つの国を形成したら、世界で二番目に炭素化合物を多く排出する国になります。私たちはずっと二酸化炭素の排出を減らそうとしていますが、牛の飼育量を減らせば、その効果は非常に顕著に現れるはずです」とボランティアの郭玫君(グオ・メイジュン)さんが講義を行い、生徒たちに地球温暖化と菜食に関係する幾つかの重要な数字を解説した。もし一日のうちの一食を肉無しにすれば、約七百八十グラム相当の二酸化炭素を減らすことができる。十五回菜食すれば、削減できる炭素化合物の量は約十二キログラムに達する。これは一本の大きな木が一年間に吸収する二酸化炭素の量に相当する。

まず一食から始め、その木を子どもたちの心に植えるのである。慈済ボランティアは生徒たちのために「植樹カード」を作り、一回菜食をするごとにカードの一マスを塗りつぶし、十五マス埋まると、この世界に一本の木を植えたことになるのだ、と励ました。

「今、英語には『クライマタリアン』という新しい単語がありますが、これは気候に配慮した食事をする人という意味です。皆さんには、誇りをもって家族や友人に『私は気候のために菜食をするのです』と言えるようになって欲しいのです」と郭さんが生徒たちを励ました。

授業後のフィードバックを見ると、多くの生徒が、自分は世界のために何ができるのかに気づき始めているようだった。

ある生徒は、一日に二食は肉を食べないと誓った。「唯一肉を食べる一食も、50グラム以下にします」と言った。また、ある生徒は、肉を減らすことで炭素化合物の排出量を減らせることを初めて知り、「しかも菜食は意外と美味しい」と感じた。別の生徒は、菜食を一回食べた後で、「とても素晴らしいことをしたような気がした」と言った。

地元・台湾の学生たちが視野を大きく広げただけでなく、言語や文化背景の異なる外国人学校の教職員や生徒たちも深い感銘を受けた。台北ヨーロピアンスクールの女子生徒は、英語で「地球を救おう、手遅れになる前に」と書いた。生徒たちを引率してプラントリウムを訪れたイギリスの中学と高等学校のスチュワート・レデン校長も、菜食は決して淡白でも味気ないものでもなく、むしろ楽しさに満ちており、日常生活に取り入れることができると気づいたと語った。そして何より重要なことを示した。「今日から生徒たちは、自分たちの生活をより持続可能なものにするために、自分ができることを見つけられるだろうと思います」。

高校生が「プラントリウム」の複合型スペースで料理教室に参加し、サンドイッチ作りをして菜食の美味しさを体験した。

「プラントリウム」で高校生が菜食の美味しさを体験したと同時に、ボランティアから地球温暖化や菜食によるCO2削減の課題について話を聞き、地球と人類に対して何ができるかを理解した。

旅の魅力 
美しい景色に美味しい食事

飲食だけでなく、旅行業と宿泊サービス業も菜食推進の重要な鍵を握っている。慈済の発祥地である花蓮でも、観光は重要な地域経済の柱である。慈済は花蓮県政府と協力して「親切な国際観光都市」の推進に取り組んでいる。旅行会社と宿泊サービス業者に「優しい菜食」活動への参加を呼びかけ、さらに、低炭素排出で持続可能な開発の理念に合致した「グリーンツアープラン」の企画を促している。

「もし朝食を提供しているなら、ぜひ宿泊客に菜食を提供してください。他の県・市とは違った雰囲気を作ってみませんか」。玉里静思堂で開かれた説明会で、上級専門スタッフである邱さんは、参加したビジネスホテルや民宿業者に対し、「菜食に優しい宿」というベジタリアン対応施設の認証基準について説明した。提供する食事の中で菜食の割合が四割に達すれば、「ベジグリーン一つ星」の認証が得られるというものだ。二つ星の基準は六割以上で、四つ星を取るには、完全に菜食にする必要がある。

この基準から見ると、実は「菜食に優しい宿」を推進するのは、VO2を広めるよりも難しい。なぜなら、VO2プラットフォームに参加する飲食店はもともと菜食を提供しており、利用する消費者も菜食をするために注文しているからである。しかし、旅行客の大部分は、菜食主義者ではない。彼らのニーズと環境に優しい菜食とのバランスをどのように取るか、経営者の知恵と決意が試されている。

「『菜食に優しい宿』グループに加入する前から、私たちのビュッフェ式朝食には肉類がありませんでした。その後、思い切ってプロモーションの際に、朝食は菜食です、と明言しました」。タロコ族出身の民宿経営者・呉美香(ウー・メイシャン)さんは、原住民料理には魚や肉が欠かせないという思い込みを打ち破った。調理台の上には、ドラゴンフルーツ、カボチャ、トマト、サツマイモの葉、豆腐といったごくありふれた野菜や果物が並び、そこに原住民が慣れ親しんだ植物の香辛料を加えることで、独特の風味になっている。

彼女の器用な手によって、ライスバーガーは赤いドラゴンフルーツで桃色に染められ、新鮮な野菜と組み合わせて、特別な料理が出来上がる。彼女の民宿が提供してくれた場所で、地域の子どもたちは慈済の学習支援を受けている。子どもたちは彼女の菜食料理に慣れ親しんでおり、ある日、急きょ肉入り弁当を夕食に購入したところ、逆に「おいしくない」という反応が返ってきた。菜食は素材選びと調理に心を込めれば、絶対に人々の味覚を魅了できるのだ。

民宿の英語は「ベッド・アンド・ブレックファースト」だが、うまく経営するためには、ベッドと朝食という二つの基本に力を注いで「情緒的価値」を高める必要があることを意味している。

「例えば、お客さんの思い出作りを手伝ってあげて、心温まるサービスと、持ち帰ることができるようなプレゼントを提供するのです。情緒的価値があれば、宿泊料金は予想よりも高く設定できます」。「菜食に優しい宿」で「三つ星」認証を得た周金蓮(ヅォウ・ジンリェン)さんは、惜しみなく体験を語った。ホールフードの野菜は、実は肉類よりも調理しやすく、シンプルに煮て切って和えるだけで十分に美味しくできる。自分の民宿が満室の時でも、菜食を作れば、最大三十人分の朝食をすぐに用意することができる。

プライベートスポットの案内や美味しい菜食、快適で環境に配慮した持続可能性のある宿泊環境は、訪れた人に「この旅は価値があった」と感じさせ、再訪の意欲を掻き立てる。「親切な国際観光都市」という理想も同様だ。グリーンツーリズムによって、人々に花蓮の豊かな自然と文化、人々の魅力を好きになってもらうことができるのだ。各方面が協力して、業者を援助し、早く大地震の傷跡を乗り越えるように、そして、持続可能な繁栄を生み出せるように、サポートする必要がある。

慈済と花蓮県政府の推進により、すでに五百軒以上の宿泊サービス業者が説明会に参加した。多くの業者は認証取得を希望しているが、県政府は年間僅か二十三軒の枠しか設けていない。即ち、「菜食に優しい宿」の認証マークを獲得した宿泊施設は、品質や心配りにおいて信頼できると言える。

「二〇五〇年までにネットゼロを達成するため、宿泊サービス業者も低炭素型の宿泊施設へと転換する必要があります。菜食による炭素削減やグリーンツーリズムの情報を見ると、多くの環境意識の高い観光客は、『菜食に優しい宿』に宿泊してグリーンツーリズムのプログラムに参加することを選びます。炭素削減は、朝食に菜食を食べることから始まるのです」と邱さんは皆に呼びかけた。

あなたが食べる物は地球温暖化の緩和に貢献できるか?

訳・善耕

出典・ClimateWatchData、Our World in Data、GoMacro

●10億頭の牛からの炭素排出
もし世界中の10億頭の牛が炭素排出国を形成したら、その排出量は、中国に次いで第2位となるだろう。

●カーボンフットプリントが低い食物
温室効果ガス排出の影響が最も少ない食物を指す。エンドウ豆、豆類、ナッツなどの植物性食物の炭素排出量は、1キログラムあたり2キログラム未満で、動物性食物に比べて明らかに低い。

●ビーガン食は炭素の排出量を最大73%削減可能
オックスフォード大学の研究によると、世界中にビーガン食を導入した場合、炭素排出量、水質汚染、土地利用を大幅に削減でき、個人のカーボンフットプリントを減らす最も効果的な方法の1つになるという。

原住民料理でも全植物性の食材で人々の味覚を魅了できる。「菜食に優しい宿」のリストには、原住民の経営する民宿が本来の味を活かした菜食で認証を取得し、名を連ねた。

菜食に優しい宿のマークには緑の葉と帆船が描かれ、認証を受けた事業者や利用する人々に、あらゆる選択や努力が地球の未来に直接影響することを伝えている。(写真提供・慈済基金会)

(写真1の提供・レストラン「ダンデライオン」 写真2の提供・慈済基金会)

菜食エクスプレス 
持続可能性の促進

二〇一七年八月にユニバーシアード競技大会が台北で開催された時、開幕前に台北市政府は宗教団体を招いて祈福を行った。慈済ボランティアたちは台北メトロに乗って会場へ向かい、紺と白の制服を着た師兄や師姉たちが車両にあふれ、乗客の目を引いた。丁度その前の年に韓国映画『新感染ファイナル・エクスプレス』が話題となっていたこともあり、ネットユーザーは、慈済人でいっぱいになったメトロを「菜食エクスプレス」と称した。

このユニークなジョークには思わず笑ってしまうが、持続可能な発展という観点から見ると、人々に「菜食エクスプレス」に乗って地球の温暖化を抑えようと呼びかけることは、まさに喫緊の課題なのである。

環境に配慮した低炭素の食生活は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも対応している。SDG12「つくる責任 つかう責任」だけでなく、気候変動や地球温暖化の緩和、海洋と陸上の生態系悪化防止にも寄与している。また、家畜飼育に必要な大量の飼料資源を節約できるため、飢餓や貧困問題の緩和にも役立つ。さらに、自身の健康や福祉にもプラスの影響をもたらす。

地球温暖化という危機に直面しつつも希望に満ちた状況の中で、慈済は菜食を弛まず推進し続け、より多角的に、しかも現代社会のニーズに合った方法で、より多くの人々を「菜食エクスプレス」に乗せ、持続可能性の促進へと進んでいる。

(慈済月刊七〇六期より)

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