自立の道

観念と生活を変えてこそ、
困難な状況を徹底して改善することができる。

ルンビニの女性に家の維持管理方法を支援

七月二十二日、マレーシアの陳吉民(チェン・ジーミン)医師は、仏陀の故郷プロジェクトチームがネパールのルンビニで展開している活動状況を報告しました。上人は、慈済人が縫製クラスの女性たちに、家事を取り仕切って家族の生活を支え、夫を助けて子供を教育するだけでなく、貧しくても規律のある生活を送って、品格を養うことができるよう指導するようにと言いました。慈済人が支援して、まずは、彼女たちが自立できるようにするのです。

上人は、縫製以外に他の手工芸を発展させることもできるのでは、と述べました。地元に自生する吉祥草を使って草編みの工芸をすることができます。住民に興味があれば、台中の清水や大甲地域の藺草編みの専門家が出向いて教えることも、慈済人が住民を台湾に連れてきて学ばせることもできます。先ず彼らが自力で生活できるよう指導することですが、最も重要なのは生活の規律を教えることです。

師姉が地元の女性たちに縫製を教え始めた当初、ある女性が縫製用のはさみを振り回すという危険な場面がありました。しかし、師姉の忍耐強い指導と愛を持ったサポートにより、時間が経つにつれて彼女たちは規則を守り、心を落ち着けて生地を裁断し、衣服に縫製することができるようになりました。「先ず愛を持って接し、その後で道理を教えることによって、女性は家庭全体を変えることができることを理解させ、さまざまな方面から彼女たちをサポートするのです。不可能ではなく、心して取り組めばできるのです。しかし、その心があっても、必ずしも達成できるわけではありません。発心する人がいるだけでなく、縁がなければなりません。今、マレーシア慈済人という縁があり、皆さんがリードして来てくれたことで、この三年間で徐々に縁が熟してきました。今その機会を逃してはなりません」。

上人は、人間の六根は六塵に対応し、その中でも眼根は色塵に対応しているので、目に見えるあらゆる景色によって意識が変わる、と言う話をしました。同様に、ルンビニの女性たちは生まれた時からこのような環境にあり、見たり触れたりした人や事、物が限られたため、生活はこういうものだと思っているのです。しかし、今、慈済人が多くの新しい物事を紹介したことで、彼女たち自身の工芸技術によって美しい作品を作ることができるようになり、人生も変わり始めました。

「私たちは様々な技巧を導入して彼女らに教える前に、先ず忍耐力と辛抱強さを教える必要があります。たった一種類の草(吉祥草)でも、彼女らは様々な作品を編み出すことはできますが、私たちはさらにきめ細かく作るよう教え、それが村の特色となれば、観光客の足を引き止めて、購入してもらうことができるのです」。上人は、観光客を惹きつける作品を作ることで、村の対外的な交通が改善され、村はあらゆる面で向上できるかもしれません、と述べました。

「もちろん、多くのことは短期間で理想的な目標に到達することはできません。ですから、忍耐力を持ち、さらに多くの発心立願した慈済人を募って、長期間にわたって仏陀の故郷の住民をサポートし、心のあり様から生活まで変えてこそ、困難な状況を根本から変えることができるのです」。また上人は師兄師姉たちに、ネパールで文章を書くことができる人を見つけて、仏陀の生誕地であるルンビニを中心に、仏陀の人生や生活の軌跡を書き、更に地図を加えることで、ガイドブックをデザインできるのではないか、と提案しました。そこから、仏陀の正法を現地に根付かせることも、弘法利生の一環なのです。

国際的な視野を持つ人材の育成

七月二十三日、人文志業の王端正(ウォン・ダンヅン)執行長、医療志業の張聖原(ヅァン・スンユェン)策略長、及び法脈宗門センターの黄麗馨(フウォン・リーシュン)秘書長と談話した時、上人は、「『仏教の為、衆生の為』は私に託した導師の教えである故に、生涯にわたって実践しているのです。仏教の為とは、慈悲喜捨の仏教精神を発揚することで、慈済の慈善、医療、教育、人文という四大志業はそれを実践しており、慈悲喜捨の仏教精神を現しています」と言いました。

また、現代の世界では交通が便利で、情報が行きわたっているため、生活する上で世界的な視野を持つことがより必要だと述べました。慈済はまもなく六十周年を迎え、大愛は世界に広がっていますが、今、天災人禍が頻発している中、人間(じんかん)菩薩の関心と助けがとても必要になっています。苦難を救うには、いつの時も人手が必要であり、現在と未来のためにも、国際的な視野を持つ人材を育成し、重責を担える人材を推挙することが大切です。

「慈済はこの数十年間、慈善救済を通じて多くの国の人々に仏教を知ってもらってきました。私たちは支援を受けた人に仏教の信仰を要求しないばかりか、被災後に異なる宗教の教会の再建も支援してきました」。「慈済が社会と世の必要に応じてこれほど多くのことを行ってきたのは、慈済人がいつも自発的に、周りの苦しんでいる人に関心を寄せてきたからです。いつどこで発生するか分からない甚大な災害に対して、いつも直ちに呼びかけに応じ、力を結集して支援しているのです」。

「私たちは、真に責任を担い、志を同じくする人材を育成しなければなりません。今、育成している人材に対しても、彼らが発心立願しているのか、才能があるのかどうかを見極める必要があります。そして、もっと重要なのは徳であり、徳でもって人々を導くのです」。上人は、「慈済学」の教育を確立し、法脈宗門の継承のためだけでなく、慈済の慈善活動は宗教に関係しているため、他の宗教を排斥しない中で、仏教の宗教観を弘め、仏教精神を活用するように、と言いました。

(慈済月刊七〇六期より)

慈済がルンビニで開設した縫製クラス。7月27日にボランティアが訪問して生徒が袋を製作する様子を参観した。(撮影・ラメシュ)

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