- 植物性飲食は、炭素の排出を削減する上に健康的であり、慢性疾患リスクを下げる。
- 菜食だからお腹が空きやすいわけではなく、正確な比率で食事を摂ることポイント。
- 211プレートは覚えやすい。半分が野菜と果物、後の半分がタンパク質とデンプン。
- 年齢が異なれば、栄養補給の重点も異なってくる。
陳婷鈺(台湾菜食栄養学会執行部長)
現在、世界中でサステナビリティとESG或いはSDGsの発展が推進され、各国が飲食面での炭素排出削減に努力しているが、台湾では、外食が多いため、一人当りの年間肉類消費量が八十七キロに達し、飲食面での炭素排出量は依然としてとても高い。そこで、多くの民間団体が菜食の推進に努め、菜食で食生活における炭素排出量を削減しようとしている。
植物性飲食は栄養が高く、カロリーが低いという特徴があり、消化が速くて体内に長く留まらないのも良いことである。しかし、菜食すれば、お腹が空き易くなるのではないだろうか?その可能性はあるが、ポイントはコツをつかんでいるかどうかだと思う。
最近よく見られる菜食の問題としては、野菜と果物の摂取量が足りず、タンパク質も不足しているが、ご飯やめん類のような精製デンプンを食べすぎていることである。たとえば台湾のお弁当容器にはおかずを載せるスペースが三つに仕切られているが、ご飯と比べると、その比率は少なすぎる。そして、豆類、大豆製品の摂取も足りていないので、確かに空腹になりやすい。
「211プレート」は、菜食を始めて間もない人が、健康的な食事をする手っ取り早い方法である。まずプレートのスペースを二等分し、半分に野菜と果物を載せ、野菜を果物より多くする。というのは、ベジタリアンは鉄とカルシウムが不足しやすいので、深緑色の野菜をベースにすることで、少しでもそれらを多く摂取することができる。たとえばカラシ菜、ヒユナ、水前寺菜などである。白菜は深緑の野菜ではないが、カルシウムの含有量が高い。他に、パプリカ、トマト、ナスを飾りにすればよい。
プレートのもう半分には、タンパク質と主食を載せる。比率は1対1。タンパク質の摂取源は原型豆類が好ましい。もしビュッフェで食事をする場合、油脂分の少ない木綿豆腐や煮込み臭豆腐、豆類を勧める。油揚げの類はなるべく取らないようにする。油揚げは油で揚げた物が多いからだ。最後に、プレートの四分の一は主食類だが、玄米、五穀ご飯は滿腹感があって長持ちするからお勧めだ。さつまいもやカボチャなどの根菜類も主食の代わりになる。
活動量の多い子供には、速やかなエネルギー補給のために、精製されたデンプンを加えてもよい。子供が玄米の食感に慣れるよう幼い頃から、玄米と白米を半分ずつ混ぜて炊くことを勧めたい。
高齢者の場合は、サルコペニアを防ぐために、タンパク質の摂取が大変重要になる。多くの高齡者は食欲がなく、タンパク質不足になり、筋肉が急速に失われる。一般的に、一日に必要なタンパク質のグラム数は、だいたい体重(キロ)かける一・二で計算すればよい。そこで、私たちは植物性タンパク質パウダーを水で溶かしたものを高齡者に推奨している。濃度が高く、体積が小さいので、効率的に摂取できるのだ。
高齢者の健康には、もう一つ問題がある。それは、骨粗鬆症である。骨密度のピークは三十歳前後で、その後は低下し始める。そして、女性は更年期を過ぎると、骨質流失は男性より深刻になる。そこで、食生活では特にタンパク質、カルシウム、ビタミンD及びB12の摂取に気をつける必要がある。しかし、筋肉量の増加と骨密度を維持するには、飲食に頼るだけでなく、運動も必要だ。高齢者の中にはジムに通って適切な筋トレをしているが、これはいい方法である。
多くの研究によると、肉類の摂取量が多い人たちは普通、肥滿になりやすく、慢性疾患にかかる比率が高い。例えば、赤身の肉は第二級発癌性物質で、ヘムに含まれる鉄分が多過ぎて、インスリン抵抗性が起きやすく、健康に良くないのだ。
この面で、菜食と健康に関した研究で、数多くの実証があるが、社会と大衆を利するには、私たちの研究よりも自発的に行動する方が有効的だと思う。たとえば、慈済ボランティアが催した「健康への挑戦・二十一日」という活動のように、飲食を提供してくれる業者、栄養師、医師、参加者が一緒になって、全植物性飲食をしてもらうことによる変化を実証している。私も菜食を推進するには、本当に心の底から、そうしたいと思い、地域の人々も喜んで参加して初めて、達成できるのだと思う。栄養師と医師は栄養に関する知識上の協力はできるが、実際に活動をして推進する力の方が重要だ。
(慈済月刊七〇六期より)
「健康への挑戦・21日」の食事内容は全て、新鮮な食材を丸ごと使うので、脂っこくなく、過度な調理も施されず、様々な色のものが入っていて、食べ終わっても、胃にもたれるようなことは全くなかった。(撮影・洪徳謙)


