路地裏の長期ケアステーション+地域のリサイクルステーション—超高齢社会の暮らしに活力を!

多くの慈済会所では、社会の趨勢に合わせて長期ケア拠点を設置している。高齢者は台中東大静思堂に来て、コーチの指導の下に、中レベルの運動と「筋肉づくりプログラム」を行っていた。(撮影・劉淑華)

少子化と高齢化の波は世界に衝撃を与えているが、台湾も介護ニーズの急増という難題に直面している。慈済はそのような時代の流れに合わせ、ナーシングホームやデイケアセンターを設立し、さらに各種長期ケア拠点を地域の会所やリサイクルステーションでも広く展開している。

高齢者が生活機能を維持し、自分らしく、尊厳をもって老いを迎えるための支援体制を整え、国連の掲げるSDGsの「すべての人に健康と福祉を」を、着実に実践している。

【慈済の活動XSDGs】シリーズ

台湾は今年「超高齢社会」の段階に突入した。六十五歳以上の人口全体に占める割合が二割を超えたが、これでも台湾はまだ、「最も高齢化した時期」ではないのだ。

国家発展委員会が発表した人口推計によると、二〇三九年、台湾の高齢者人口の割合は三割を突破し、二〇五九年には四割を超えるという。さらに、今は若年、壮年層の未婚、無子比率が高いため、将来高齢期を迎えた時には家族の介護に頼ることができないという問題に直面することになる。

今の高齢者と将来の高齢者を適切にケアするために、政府は二〇〇七年に「長期ケア十年計画(長照一・〇)」を展開し、二〇一七年には現行の介護施策である「長期ケア二・〇」を導入した。対象者を拡大しただけでなく、より重要なのは「ABC全域型介護モデル」を確立し、介護資源を三段階に分け、申請の受理からサービスの提供まで、できる限り、高齢者が慣れ親しんだ環境を離れることなく、支援を受けられるようにしたことである。
 
約二十年にわたる施行と普及の結果、「長照」(長期ケア)は一般的な用語となったが、長期にわたって慈善、医療志業を行ってきた慈済は、二十世紀の六〇年代という早い時期から、「他者に対する長期ケア」の志業を始めていた。

ナーシングホームでは機能回復が最優先

「慈済が最初に長期ケアを行った対象は、一九六六年に始めた個別案件の林曽(リン・ヅン)お婆さんです」。慈済長期ケア推進センター副代表の荘淑婷(ヅォン・スウーティン)さんが詳しく話してくれた。当時八十歳を超えていた林曽お婆さんは、身寄りのない未亡人で、自立した生活をすることができなかったため、衣食住と行動から最期の葬儀に至るまで、慈済がすべての世話をした。訪問ケア、医者への付き添いなど、初期の慈済ボランティアによる慈善活動は、現在の長期ケアサービスの内容とよく似ている。

医療志業が始まると、施設型の長期ケアサービスを徐々に展開した。一九九八年六月、花蓮慈済病院附属の「デイケアとナーシングホームが組み合わさった、軽安居」(安心して過ごせる施設)が正式にオープンした。これは慈済が初めて提供した施設型の長期ケア施設であり、現行法規に定められているB級施設に属する。二〇一四年には、台中市潭子区に宿泊可能な「台中慈済ナーシングホーム」が設立された。

「寝たきり状態の高齢者が入所したら、より良いケアをして、歩いて退所できるようにします。また、車いすで入所した人には、毎日少なくとも数時間は立てるようにし、いつの日か自宅に戻って家族と共に幸せな時間を過ごせることを目指しています」。

荘さんの説明によると、従来のナーシングホームや養護施設のように、高齢者が最期まで住み続けるのとは異なり、慈済のナーシングホームは、利用者の心身機能の回復に力を入れ、「自宅に戻る」ことを最高の理想と目標にしている。高齢者が退院して自宅に戻る前に、医療スタッフとボランティアが家庭訪問をし、居住環境の改善をサポートしたり、在宅ケア計画を立てたりすることで、高齢者の自宅復帰に適した環境にして、家族が引き継いで安心して介護できるようにしている。また、嚥下や筋力のトレーニング、チューブ抜去訓練などの様々な健康促進訓練を行った結果、サービスを受けた高齢者の「自宅復帰率」は、五十%~六十%に達した。

社会のニーズに応じて、宿泊型施設は不可欠であるが、より多くの高齢者をケアするためには、地域に密着した長期ケア拠点を広く設置する必要がある。政府が長期ケア二・〇施策を推進した後、慈済基金会は二〇一八年に「長期ケア推進センター」を設立し、各県市で各レベルの長期ケア施設の設置を推進している。

介護人員は、デイケアを受ける高齢者に付き添い、突発的な状況にも対応できるよう、慎重にケアしている。この仕事は、専門的な訓練を受けて初めて務まるのである。

デイケアセンターで授業に参加して前進を目指す

台中清水静思堂前の木陰で、高齢者たちが歩行器を使ったり、車椅子に座ったりしていたが、移動する間も介護スタッフがそばで世話をしていた。「次はあなたが切る番よ!」と介護スタッフの陳碧玉(チェン・ビーユー)さんが一人の男性利用者にハサミを手渡した。彼はアロマティカスを採取する動作をリハビリとして行っていた。その七十歳未満の男性は、慈済清水デイケアセンターに通っている三十数人の利用者の中では最も若い。脳卒中による片麻痺があったが、退院後に静思堂に来て、デイケアセンターの日々のプログラムと活動に参加してきたことで、体の状態は大きく改善した。

台中の海沿いにある清水静思堂は、台湾全土のABC三段階の長期ケア資格を持つ十五の慈済会所の一つである。ここでは、毎週月曜日から金曜日まで、高齢者が「授業」を受けに来る。

「天気が良ければ、高齢者に日光浴しながら歩いてもらうこともあります。彼らも屋外で座っているのが好きなのです」。慈済清水総合長期介護施設の呂怡静(リュウ・イーチン)主任が言った。高齢者に付き添う介護スタッフは常に注意力を保たなければならない。なぜなら、デイケアセンターの利用者は身体機能がある程度衰えていたり、身体機能を喪失しているため、杖や歩行器、車椅子などの補助具に頼る必要があるからだ。また、食事の時には呑み込みの問題があるかどうかに注意を払う必要があるため、細心の注意と配慮が求められるスタッフが信頼されるのである。

七十四歳の紀さんは、両膝が変形して手術を受けた経験がある。子どもたちは普段、仕事をしているか子育てで忙しいため、毎週月曜から金曜の朝は、車で清水静思堂まで彼女を送り届け、同年代の「クラスメート」と一緒に活動に参加し、午後三時か四時ごろに迎えに来て、帰宅している。慈済の長期ケアサービスに対して、紀さんはとても満足している。力を尽くす介護スタッフ、訪問介護員、ボランティアの多くは、いわば「他人の長期ケアを志願して行う人たち」なのである。

「證厳法師は、『他人の長期ケアをする側に立ち、される側になってはいけません』と私たちを励ましており、この言葉に深く感動しました。私の体はまだ大丈夫で、高齢者の付き添いができると思ったので、長期ケアの仕事に就きました」。介護スタッフの陳碧玉さんは、その仕事に参加する前は、すでに定年退職して暫く経っていたが、慈済ボランティアとして全力を注ぐようになった。二〇一八年、清水静思堂に長期ケア拠点が設立されると、訪問介護員や介護スタッフなどの専門人材が必要になったため、研修に申し込み、高齢者ケアの基本的な技能、例えばベッドからの上げ下ろし、食事介助、経管栄養法などを学んだ。

高齢者ケアには専門的な技能だけでなく、何よりも「心」が必要である。陳さんだけでなく、多くの地元の慈済ボランティアも介護スタッフや訪問介護員の研修に参加し、修了後は静思堂で定期的に活動する人もいれば、外勤で在宅サービスを提供している人もいる。ベテランボランティアの王衍基(ワン・イェンジー)さんは、訪問介護員の訪問ケアに同行することが多く、時には利用者の情緒が不安定な場合に対応することもある。他の法縁者と同様、長期ケアに関しては全力で協力している。「高齢の菩薩たちは、デイケアセンターに来ても、初めは元気がないことが多かったのですが、主任やスタッフの励ましにより、今ではとても生き生きとしています。私たちはそれを見て感動し、支えていこうと思いました」。

ボランティアは、慈済に委託運営している台中市立仁愛長期ケア施設で、自分と同年代の高齢者と交流し、「他人を支える長期ケアを行い、他人に介護されない」という理想の老後を実践している。(撮影・張麗雲)

慈済会所 
地域密着型長期ケアステーション

また、清水静思堂には、地域密着型長期ケアステーションのスペースがあるが、デイケアセンターに比べて雰囲気はずっと活気にあふれている。利用者たちは自立した行動がとれるので、その多くは徒歩、バス、自転車でやって来る。八月の夏休み期間には、放課後教室を運営する慈済ボランティアが、教室の小学生を連れてきて、お年寄りと共に「世代間交流による学習」を行う。

「はい、自分の席に座って!」と介護スタッフの蔡翠珍(ツァイ・ ツウェイヅン)さんが慌ただしく秩序を整えた。おやつ作りの授業は終盤に差し掛かり、お年寄りも子どもたちも、自分たちが作った、餡にジンスー穀物パウダーを使ったサンドクッキーを味わった。

「皆、外部の団体が交流に来ると、格別に嬉しくなるのです。子どもたちを自分たちの孫のような目で見ます。そういう感じは特別なものです」。蔡さんは清水静思堂レベルCの地域密着型長期ケアステーションの概要を簡単に説明した。ここに来る高齢者たちは自立して生活できる能力があり、年齢は七十代から九十代まで様々で、女性が八割以上を占めている。

「私の人生はここで色彩豊かになりました。みんなは『若返ったね』と言ってくれます。心が明るく楽しいと、人は若々しく見えるのですね!」。「班長」を務める七十八歳の利用者、蔡秋霞(ツァイ・チュウシャー)さんが振り返った。十年前に屋台を店じまいして、正式に退職してから、丸二年間、家にこもっていた。八年前、清水静思堂で地域密着型長期ケアステーションが開設されると、彼女は再び晩年に輝きを取り戻した。

「ここに来るとたくさんのクラスメートがいて、一人が一言話すだけで三十もの言葉になります。私は『ゼンタングル』が一番好きで、それを描くと気分がとても明るくなるのです。水墨画にも興味があるので、少しずつ学んでいます。運動も大好きです」と蔡さんが言った。

デイケアセンターや老人ホームなど、要介護者や寝たきりの人のケアを重視する長期ケアレベルBに比べ、数が最も多く、広く分布しているレベルCの地域密着型長期ケアステーションは、予防に重点を置いている。高齢者が健康な状態、または「準健康」な状態の時から参加して活動することで、身体機能の衰えを遅らせ、「不健康な余命」を短縮し、家庭や社会の長期ケアの負担を軽減することを目的としている。

高齢者が住まいの近くに外出し、社会的な交流を増やせるように、慈済の長期ケア系統は、台湾全土に百二十五の地域ケア拠点を設けている。これらの拠点は住いの近くにある慈済会所やリサイクルステーションにあり、同時に政府が推進する健康診断や運動などの予防的な健康増進策と連携している。また蓄積されたビッグデータを活用することで、リスクの高い層を特定し、優先的に支援を行うことも可能である。

「台湾全土にある百以上の地域ケア拠点を運営してきて、高齢者は筋力や下肢の筋持久力が非常に不足していることが分かりました。そのため、今年はまず十八の拠点から、サルコペニア(筋肉減少症)の普及スクリーニングを行い、『愛GO力 筋力増強プログラム』を展開します」と、慈済長期ケア推進センターの担当者、賴珈文(ライ・ジャーウェン)さんが詳しく説明した。この半年間の活動は二〇二五年三月に始まり、約六百名の高齢者が「筋力づくりプログラム」に参加した。

参加者はまず事前測定で、体重、BMI、体脂肪率、筋肉量、握力などの運動データを記録する。その後、地域ケア拠点で週に最低一回、講師の指導の下に、スクワット、脚上げ、ペットボトルダンベルなどを使って、レジスタンストレーニングを行う。運動後には、ジンスー豆乳パウダーを溶かした飲み物を摂取してタンパク質を補給し、筋肉の修復と増大を促す。「高齢者は若者のように筋肉量を急速に増やすことはできませんが、できる限り現状の筋肉量を維持することが大切です」と述べた。

高齢の利用者たちは毎週コーチの指導の下に、中レベルの運動を行い、毎月定期的に体重、筋肉量、握力などのデータを測定する。半年間規則的に運動を続けた結果、多くの高齢者は体力の改善を実感している。

実は、慈済は長期ケア拠点で長年にわたってフィットネス活動を推進しており、熱心なボランティアは自費で運動指導の訓練を受け、連絡所やリサイクルステーションに戻って、高齢者に教えている。「環境ボランティアにも、一週間に少なくとも一回、練習することは健康に良いと伝えています」。自費でフィットネスインストラクターの資格を取得したボランティアの董寿梅(ドン・スォウメイ)さんは、トレーニング内容やレベルを高齢者に適したものに調整し、運動しに来るよう高齢者を励ましている。

清水静思堂デイケアセンターの利用者が、慣れた手つきでアロマティカスを採取していた。枝葉は抽出してバルサムに加工できる。生産量は多くないが、作る過程で手と脳を活性化させ、小さな達成感が得られる。

慈済清水デイケアセンターでは、園芸、音楽、運動など多彩な活動を提供しており、高齢者は家から出て授業に参加することを楽しんでいる。

認知症予防にリサイクルステーションは効果的

サルコペニアから派生する身体的衰弱や身体機能の喪失だけでなく、認知症やうつ病も高齢者の生活に重大なリスクをもたらす。慈済長期ケア推進センターは、慈善、医療チームを統合して長期ケア拠点を設立し、地域社会の資源を有効活用して、認知症の予防と進行抑制を推進している。

「国家衛生研究院の統計によると、二〇二四年の台湾の認知症人口は三十五万人で、高齢者人口の約八%を占めています。認知症の進行過程では、六十六%の人に精神行動的な症状が現れ、理由のない不安やパニック、うつ症状が現れます」と、台北慈済病院老年精神科の李嘉富(リー・ ジャーフー)主任が、台湾の高齢者の認知症の概況を簡潔に説明した。

現在、認知症はまだ治癒できないが、幸いなことに、認知症の約四十五%は予防と遅延が可能である。「高齢者に視力や聴力の問題が現れた場合は、眼鏡や補聴器を使用させ、視覚や聴覚をサポートすることが大切である。そうすることで、認知機能の低下を遅くすることができます。さらに、健康的な食生活と規則的な運動によって、体重・血圧・血糖値・血中脂質の四つを下げることで、発症率を約十二%減らすことをできるのです」。

李主任は、個人でできる認知症予防のポイントをいくつか紹介している。外出して自分の能力を発揮することも、認知症予防やうつ状態の解消に効果的であると述べた。「数年前に国民健康署のウェブサイトで、『リサイクル活動に参加することで、認知症の予防・進行遅延が可能』と書かれているのを見ました。それ以来、私はリサイクル活動を『社会的処方箋』と設計し、運動や認知機能の促進を組み込んで、慈済の拠点で実践しています」。

李主任は、七十歳を超えた慈済のリサイクルボランティアを観察するうちに、その多くが血圧・血糖・血中脂質の異常や慢性疾患を抱えているにもかかわらず、同年代の人よりもはるかに活力があることに気づいた。環境保全活動や他者への奉仕を通じて、運動と脳の活性化、人との交流を続けることができれば、自立した生活機能を維持できるという。「介護にお金をかける必要がなく、毎月三万元以上得をしたようなものです!」李主任は笑いながら、「ですから、慈済のリサイクルステーションは、最高のデイケアセンターと言えます」と言った。

高齢者たちは、回収された資源の分別に集中し、一つ一つの動作で手と目の協調性を鍛えていた。さらに、人と頻繁に交流することも、認知機能の低下を遅らせることができる。このため、リサイクルステーションは「最高のデイケアセンター」と評されている。(撮影・黃筱哲)

健康促進 老いても衰えない

国連の持続可能な開発目標に対応して、適切な健康増進と長期ケア施策は、高齢者の健康福祉を促進するだけでなく、介護のために仕事を失ったり、貧困に陥ったりする状況を減らすことにもつながり、ますます貴重になる若年労働力が経済成長に投入できるようになる。慈済が台湾全土に立ち上げた長期ケア拠点と、地域ボランティアの専門能力の育成は、継続して健康ケア行動に取り組んでいる。これにより、前述の目標達成に貢献しているだけでなく、まず高齢者が身体機能を喪失せず、自身の良能を発揮して社会に貢献できるようにすることを目指している。

「ですから、慈済の長期ケアは、他人をケアするのであり、他人にケアしてもらうのではありません。ボランティアは社会資源を使わず、社会に貢献しているのです」と、慈済基金会の顔博文(イェン ボーウェン)執行長が改めて強調した。

未来を考えると、台湾の少子化と人口の高齢化は避けられないが、健康増進と適切な長期ケア施策を通じて、高齢期を「楽しい老後」に変え、高齢者の衰弱スピードを緩め、人生で介護を受ける必要のある時期を短くし、地域で安心して老いてもらうことはできる。また、早めの準備と行動があってこそ、未来の「老いても衰えない」人生を予見できるのだ。

(慈済月刊七〇七期より)

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