無数の「一個人」に呼びかける─慈済大林病院、慈済斗六病院

コロナ禍が厳しさを増していた頃、嘉義の慈済大林病院と雲林の慈済斗六病院は、院内と地域の健康を守った。ワクチンが順次届くと、医療チームはワクチン接種に全力を尽くし、更に愛の心を募るために立ち上がった。台湾全土の人々が早く健康的な生活を取り戻し、たくさんの学生が安全に学校に通えるようになる日が来て欲しいと切望しながら。

カランコロンという音が病院のロビーに響き渡った。人々が愛の竹筒(貯金箱)を慈済大林病院に持ち寄り、病院は温かい雰囲気に包まれた。「台湾には愛がある。心を合わせて感染防止に努めよう」と題して愛の心を募り、ワクチン購入を支援する募金活動が行われた。九月三十日午後、司会を担当するボランティアチームメンバーの陳鶯鶯(チェン・インイン)さんが、開会の言葉を述べた。「一人の力は小さくても、その力がたくさん集まることで生まれる『愛のエネルギー』は、無限大にすることができます!」

BNTワクチンは、12歳から17歳までの若い人に投与できる、世界で初めて認可されたコロナウイルスワクチンである。台湾で使用されている1500万回分は、政府の指導の下に、民間団体と企業が共同で購入したものだが、その過程は容易ではなかった。(撮影・蕭耀華)

慈済大林病院入院長期介護施設の看護部長・郭如娟(グォ・ルージュェン)さんは、自分の子供は間もなく予防接種を受ける中学生だが、もしワクチンが足りなくなれば、全員が体を保護する力を持つようにはならないので、自分の力はわずかだが、「海老で鯛を釣る」という諺のように、より多くの愛が集まってほしいと願って、この竹筒を寄付した、と述べた。

今年、慈済大林病院は創立二十一周年を迎え、介護サービス、教育面での研究と地域医療で成果を上げているが、それ以上に重症救急医療を担っている。救急外来の主任である李宜恭(リー・イーゴン)医師は、コロナ医療の最前線に立った時、人々の心の苦しみを目の当たりにしたと語った。その苦しみを和らげるには、愛でもって諸々の不調和を解消する安定した力にならなければならない。同時に彼は救急外来のスタッフに、台湾が困難を乗り越えられるよう、「愛の心を募る」活動への参加を呼びかけた。

総務室事務係長の蔡正偉(ツァイ・ツンウェイ)さんと脳神経外科専属看護師である妻の洪美玲(ホン・メイリン)さんは、竹筒貯金をして十年になり、既に日常生活の一部になっている。今回は半年間貯金した竹筒を取り出し、必要な時に人を救う役割を果たした。硬貨でいっぱいになった竹筒には、長い間絶えることのなかった夫婦の愛が結集していた。

賴寧生(ライ・ニンスン)院長もまた、「コロナ禍は、世界経済と社会に深刻な影響を及ぼしました。我々同僚も自分の持ち場できちんと役目を果たすだけでなく、愛でもって防護する必要があります。方向が同じである限り、誰もが少し努力して善行すれば、一本の指に力が集まるように、善の念が集まって世界に福をもたらすことができるのです」と言った。

雲林中学サッカーチームは、慈済斗六病院でBNTワクチンを接種した後、祝福会に参加し、感染予防のために持っていた小遣い銭を寄付した。(撮影・于劍興)

雲林中学サッカーチームの十七人のメンバーは十月の試合のために、他に先立ってBNTワクチン(ファイザー社とビオンテック社が共同開発したワクチン)を接種するため、慈済斗六病院を訪れた。また、病院のロビーで行われていた「愛のこもったワクチン・皆で感染予防」と題した祝福会に参加し、購入が容易でなかったワクチンに感謝すると共に、教師と学生は持っていた小遣い銭を寛大に寄付した。簡瑞騰(ジエン・ルイトン)院長とスタッフは、チームが勝利して、雲林に錦を飾ってくれることを祝福した。

簡院長は、BNTワクチンを手にいれるのは容易なことではなく、慈済基金会を含む多くの慈善団体の募金で達成できたことに言及した。また、祝福会に参加した一人ひとりが、帰宅して、「善行は、皆で力を合わせることで成し遂げられ、どんなに僅かでもあらゆる布施は愛であり、心にある思いは善である。その愛をさざ波のように広げていこう!」と家族と分かち合ってほしいと言った。


(慈済月刊六六〇期より)

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