共に善行するエネルギーを集めよう

編集者の言葉

新型コロナウイルス感染症が爆発的に拡大して以来、ワクチンはこの世紀の疫病を終わらせる切り札だと見なされてきた。科学技術は可能な限りの試みをして、ワクチンの開発には少なくとも十年の研究期間が必要という今までの考えを覆した。このウイルスのワクチンは、たった一年ちょっとの臨床試験を経ただけで認可され、大規模な接種が行われている。

これは人類の医学史上における一大躍進であるが、世界的にもワクチンを生産する能力には限界があり、政治的、経済的な要因と相まって、ワクチンを購入する機会は平等ではない。

国際情勢という難問に直面して、台湾のワクチン入手は困難を極めた。感染発生当初は公衆衛生対策を以て順調に防疫を進めてきたが、それでも五月から警戒レベルが3に引き上げられると、感染拡大長期化などへの緊張感からしばしばワクチン接種の重要性が浮き彫りとなった。

今月号の主題報道にある「ワクチンの購入と寄付」に関する記事を見ると、今年慈済基金会が行ってきた慈善ケアの中核を成していたことがわかる。七月、政府の委託の下に、慈済基金会は鴻海集団の永齡慈善基金会、TSMCと共同で、合計一千五百万回分のビオンテック(BNT)製ワクチンを購入し、管轄政府機関に寄付した。それでやっと九月からワクチン接種が始まった。

慈済がワクチン購入を決めたのは、證厳法師の一貫した精神に基づいている。これは、三十五年前に困難を恐れず、医療資源が不足していた花蓮で病院を建設し、そして台湾中部大地震(九二一大地震)の後、被災した五十一校の学校再建プロジェクト「希望工程」を行った時と同じである。法師はかつて「お金がどこにあるのかは分かりませんが、愛がどこにあるのかは知っています」「正しいことは実行に移せばいいのです」と言ったことがある。これに応えて、慈悲深い企業家から積極的護持を得られただけでなく、世界中の慈済ボランティアも共に愛の心を募って共感を寄せたのだ。

ワクチン接種により、重症や死亡に至るリスクと医療システムへの負担を軽減することができる。コロナ禍が生計に与える影響が大きい低所得者にとって、その益は必然的に各種救済支援を上回ると言えよう。しかし、ワクチンの接種率が高いと知られている多くの国でも、変異株ウイルスの感染拡大や社会活動の増加に加え、公的機関の予防措置緩和が早すぎたことで感染が再び拡大した様子から、今でも防疫対策を軽んじてはいけないことが見て取れる。

変異を繰り返す新型コロナウイルスに対して、「集団免疫」の目標が達成できるかどうかはまだ未知数である。専門家は、ワクチン接種がウイルスの変異に追いつけない時、かえってワクチンの保護能力を弱めてしまう、と率直に言い切る。国際通貨基金(IMF)のエコノミストは、ワクチン接種の機会が不平等であるため、世界経済の回復がより遅く、且つ不均衡になると警告している。

現在、国内外でコロナ疲れの現象が見られる。ワクチン接種後も、感染防止には気を緩めず、警戒する必要がある。證厳法師は、平穏な時に危機に備えて準備を整え、自己防衛を徹底し、自愛して人をも愛してこそ、家庭全体、そして社会全体が平安を得る、と強調している。

慈済ボランティアも法師の呼びかけに応え、今回のコロナ禍を機会に生命を尊重する菜食を推進している。動物を尊重する敬虔な愛の心でもって、共に善行するエネルギーを結集し、真に身心を守る防護ネットを作ろう。


(慈済月刊六六〇期より)

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