編集者の言葉
台湾で実施されたステイホーム感染防止策から一カ月半が経ち、コロナ禍は次第に落ち着いてきたため、政府は「警戒体制の小規模解除」を発表した。しかし、ウイルスの変異株が後を絶たず、慎重に防疫を続ける必要がある。
コロナ禍は鏡のようなもので、非常時には人々が互いに一層ケアし合う必要があることを映し出している。脆弱な部分が修復されれば、社会は強靭性を回復することができるのだ。
中央研究院の社会学者である林宗弘(リン・ソンホン)氏の研究によると、相対的に社会福祉システムが整った北欧諸国は脆弱性が比較的低いため、コロナ禍においても相対的によく制御されている。社会階層が比較的平等で、人同士の間や政府との協力度合いが高い国ほど、災害下でのインパクトは小さく、災害後に残る心的外傷も少ない。
感染拡大に覆われる中、慈済ボランティアは慈善訪問ケアを電話に切り替えて続けている。ケア世帯が生活に困っていないかを気にかけ、補助の申請を手伝うだけでなく、より多くの時間を使って相手の話に耳を傾け、張り詰めた情緒のはけ口になるよう努めている。直接訪問することができず、体の状態や顔の表情を見ることができないため、相手に詐欺電話かと疑われることがよくある。それゆえ一層、ボランティアは話す時の語気に気をつけて相手に温かい印象を与えるように注意を払っている。
あるボランティアは、毎日ニュースを見て不安に感じていたケア世帯に何度も電話をかけ、「私たちが寄り添っていますよ」と慰め、やっと相手を落ち着かせたことがある、と言った。また、緊急支援を受け取っていなかったら、行き場を失って子供と一緒に無理心中することも考えたというケースもあり、後になってそれを知った。これらの経験から、ボランティアはケアの緊急性を心から感じた。
今月号の主題報道に掲載しているが、昨年のコロナ禍の発生当初、慈済基金会は直ちに県や市政府と「慈善協力に関する覚書」を交わした。今もコロナ禍が深刻化する中、県や市政府と協力して、「自宅待機」している人々や支援を必要としている社会的弱者のために、米や麺など日常的な食糧を中心とした「安心生活ボックス」を提供している。多くの恵まれない生徒にとって、学校の給食は重要な栄養源である。学校が休校になっていることを考慮して、慈済は世帯単位で「健康野菜果物ボックス」を提供している。
慈済ボランティアによる電話での訪問ケアは増え続けており、公的機関を介して関連業者への雇用機会も生み出している。基隆では、「健康野菜果物ボックス」の梱包・配送当日に青果市場が休みだったため、明け方に小売業者が集まって良質の新鮮な果物や野菜を選び、箱詰めした後、タクシー業者によって必要としていた世帯に配送された。
「安心生活ボックス」も台湾にいる東南アジアの留学生や外国人労働者をケア対象として聖クリストファー教会に届けられた。シスター・阮艷紅(ルアン・イエンホン)は、コロナ禍で人々は隔離を余儀なくされているが、心は隔離を乗り越えることができると述べた。宗教に関係なく、思いやりのある心を通して、人はどうしてほしいかを見て取ることができる。
證厳法師もこう指摘した。人々がお互いの身の上を思いやる限り、愛のエネルギーは最終的にコロナ禍による不安や恐怖を一掃してくれるので、希望がどこにあるかを見出だすことができる、と。
(慈済月刊六五七期より)