「慈済月刊」五十六年を経ても 法の香は昔日のまま

編集者の言葉

慈済の機関誌である「慈済月刊」は、慈済が設立された翌年に創刊され、功徳会より僅か一年若いだけである。今年の五月に慈済は創立五十七周年を、七月には「慈済月刊」も五十六周年を迎える。

最初の頃、この刊行物は「慈済」と称され、大きさは新聞紙一枚で、半月に一度刊行されたが、その後は冊子の形で出版されている。内容は、会員の寄付の記録や慈善活動、仏法に関する話から、より多方面のボランティアの逸話や各志業の発展状況、社会問題に関する議論などが含まれるようになった。一枚でも一冊でも、また発行サイクルが段階的に変更されても、創刊当初の「人や世を利さない話を載せて一字一行たりとも無駄にすることは決してしない」という初心は数十年来変わらず、第六八〇号に至った今でも貫かれている。真実を報道し、読者がこれを読む時、人間(じんかん)の真善美の香りに浸ることができるようにしたいだけなのである。

「慈済月刊」には特色が一つある。いつも三分の一に及ぶページが、世界中の人文真善美ボランティア(人文記者)によって執筆されていることだ。今月号では、彰化にある慈済エコ福祉用具プラットフォームの話を紹介している。記事の一つを書いた詹大為(ヅァン・ダーウェイ)さんは、かつて証券会社のスーパーセールスマンで、その後、支店長を務めたが、五十歳で思い切って退職し、フルタイムの慈済ボランティアになった。彼は新人として映像技術、ニュースと原稿の書き方を学び、今ではその作品が大愛ニュース、「慈済月刊」、慈済のウェブサイトなどでよく使われている。専門家に劣らない慈済の人文真善美ボランティアに転身し、成功した人だと言えるだろう。

世界中の人文真善美ボランティアと同じように、彼らは記録を担当するだけでなく、募金集め、訪問ケア、集会所の維持運営などにも携わり、あらゆる慈済ボランティアと同じように任務を遂行している。彼らのペンやレンズが捉えた人物や事柄は、その瞬間の真実であり、彼らが至近距離で観察して得た精華でもあるのだ。

慈済エコ福祉用具プラットフォームは二〇一七年三月に立ち上げられ、現在台湾全土で既に二十六カ所で展開されている。ボランティアは中古の福祉用具を消毒、清掃、修理して、ほぼ毎日、発送と受け入れも行っている。今年四月末の統計によると、延べ五万点を超える福祉用具が提供され、三万三千世帯以上を支援した。そのうち、一月から四月までのケア世帯数は、昨年度の半分を超えており、需要の動向は、台湾が二年後に超高齢化社会に突入するという動向と一致している。

慈済エコ福祉用具プラットフォームは、時代の変化と共に出現した新たな慈善の項目である。それに対して、訪問ケアボランティアが各コミュニティで行っている貧困救済などの慈善活動は慈済志業の根本である。今月号のテーマ報道には、記者がボランティアの後に付いて、社会的弱者世帯を訪問し、彼らが長期にわたって精神疾患患者に付き添い、人生の苦難から抜け出す手伝いをした逸話を掲載した。それは半世紀一日の如く、貧しい人々を支えて来た現実の姿でもあるのだ。

(慈済月刊六八〇期より)

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