二〇二三年の夏、静思精舍の野菜畑は、いつもと違っていた。新しく植えたオクラが、一面に生い茂る緑の葉の上に浮かぶように淡い黄色の花をつけていて、遠くから人目を引いた。このオクラ畑を見て、数年前のある夏の出来事を思い出した。
毎日精舍で使う野菜はほとんど自分たちで栽培したものだが、あの年は颱風が頻繁に来襲し、農作物の成長と収穫に大きく影響した。また、台風が過ぎた後は、野菜の価格が倍に跳ね上がり、精舍で新たに植えた野菜は食事の需要に追いつけなかったが、幸いなことにオクラは収穫があった。オクラは食物繊維、ミネラル、カルシウム及び多くのビタミンを豊富に含んでおり、ネバネバした成分は胃にとても良い。オクラは元来、精舎の献立の中では副菜に使われていたが、過渡期には、ほぼ毎日食卓の「主役」になった。おかげで私たちは、あの夏を乗り越えた。
二〇二三年十月、台風十一号(ハイクイ)が花蓮に上陸し、精舍の菜園が大きな影響を受けた。それでも、一面のオクラは依然として揺るぎなくそそり立ち、風雨が過ぎた後は一層すくすくと成長し、メニュ―を豊富にしてくれた。「苗から成長して収穫するまで、既に三つの台風に遭遇しました」。この時オクラ菜園を管理していた徳勇(ドーヨン)師父がこう言った。
「修行者はこのようにあるべきです。社会の試練に堪えてこそ、天と地の間にそそり立つことができるのです」。
強い日差しの下でオクラを採取していた徳勇師父は、感謝の気持ちを込めて語った。
「一日おきに、大きな袋がいっぱいになるほど採れます。私も度量を大きくして幸福を分け合い、皆さんに喜んで食べてもらいたいのです。未来の仏に供養することは、私にとっても喜びなのです」。
オクラは、成長して収穫が終わるとその下の葉っぱも一緒に切らなければならないが、これはなぜだろう。
「捨ててこそ得るものがあるのです。この葉は既に役目を終えていますが、もし残しておくと、他の枝葉の養分を吸い取り、成長中のオクラの実が栄養不足になってしまいます」。徳勇師父は、これがすなわち、證厳法師が教えてくれた「第六識を妙観察智に変える」ということだと言った。栽培するうちに経験を得て、残すべきは何か、捨てるべきは何か、分かるのである。
(慈済月刊六八六期より)