台南市私立慈済高校小学部の一日あたりの給食の食べ残しは、三年前の三十五キロから今では三キロにまで減り、平均すると一クラス僅か百二十グラムである。
六百人余りの小学生はいかにして成し遂げたのか?
小学部の教室で、生徒は順番に給食を取り、給食トレーにお椀を載せることで、整然とした盛り付けになり、色や香りや味を引き出していた。
「
米粒も野菜もスープも、苦労して得たもので、ゆっくり噛んで味わい、天下の衆生の恩に感謝しましょう」。給食の時間になると、台南市私立慈済高校小学部から「感謝の歌」が聞こえてくる。福を惜しみ、食を惜しむ考え方は、日々の繰り返しによって潜在意識化し、多くのクラスでは食べ残しゼロ運動で、「お皿を空にする」目標を達成している。
台南市私立慈済高校小学部教頭の顔秀雯(イェン・シュウウェン)さんが、二〇二一年に始まった「お皿を空にする(食べ残しゼロ)」活動の由来を説明した。食べ残しを改善の目標にした理由は、生徒たちがセントラルキッチンを参観した際に、一回の給食で、六百人余りの生徒が作り出す食べ残しの量を軽んじてはならないことを実感したからだ。
当時の食べ残し量はどれくらいだったのか?顔さんは詳細に記録を残していた。同校小学部で出る食べ残し量は、一日で三十五キロであった。他の同程度規模の学校と比較すると多くはなかったが、「一学期に百日の登校日があると計算すると、三千五百キロ、つまり三・五トンの食べ残しが出ることになるのです」。
この事は顔さんを驚愕させ、「先ず食べ物の背景にある生産や輸送から出るカーボンフットプリントの問題を除外しても、食糧の生産につぎ込んだお金と農民の苦労を考え、更に世界で飢えている人口があまりにも多すぎるのに、私たちは食べ物を浪費していたのです!そこで皆で食べ物を残さない運動から着手しました」。
好き嫌いの組み合わせ
環境部の統計によると、台湾のこの十年間に家庭から出た生ゴミの回収量は、一人あたり年平均で二十四キロに達した。台湾全土の五十万トン余りの生ゴミに、生産と販売の過程で出た規格外品や売れ残りにより廃棄された物を加えると、一年間の食品ロスの総量は百万トン以上になる!
三年前、顔さんは生徒を連れて、環境部とアメリカ環境保護庁が共同で行った「台米エコ・キャンパス」(US-Taiwan Eco-Campus)プロジェクトに参加した。その主旨は、生徒が自主的に様々な環境問題を解決するようにと期待したもので、その内の一項目が「サステナブルフード」(持続可能な食)である。「私たちは学校のセントラルキッチンで栄養士がどのように給食の献立を作っているのかを聞き、残った食べ物の処理状況を観察して、初めて分かったのです!わあ!生ゴミが本当に少なくない!」。
台米エコ・キャンパスプロジェクトのサステナブルフードチームに参加した生徒は、インターネットで資料を集め、三人寄れば文殊の知恵で、最後は「光盤」(空の皿)というプロジェクトネームに決定した。校内で食べ残し削減を宣伝し、教師や生徒に食べ物を浪費せず、捨てる食べ残しを極力減らすよう呼びかけた。同校生たちは特別に、「お皿を空にする大使」の賞状を作成し、着実に食べ残しゼロを実践した優秀クラスを奨励した。
第一回「お皿を空にする」運動を推進した小学生のメンバーで、今では中学二年生になった魏靖軒(ウェイ・ジンシュェン)さんによれば、小学生は計量と記録に不慣れなので、この活動には教師と生徒が一緒に参加し、横で教師がサポートした。
小学部の教師と生徒が取り組みを始めたのみならず、セントラルキッチンを請け負う業者も協力し、小学生が発起したこの運動を正面から捉え、各クラスの計量測定を手助けするだけでなく、クラス毎の毎日の人数の変化に合わせて、おかずの量も調整した。
例えばコロナ禍の間、生徒は学校に登校することができなかったため、給食を食べる人が減り、担任教師はセントラルキッチンに主食とおかずの量を減らすよう知らせた。生徒たちも互いに、取った分のご飯とおかずは全部食べるよう呼びかけた。仮に給食用容器に残り物があれば、皆で一口ずつ分け、捨てるものがないようにして、クラスの名誉を保った。
その他、ベテラン栄養士の方でも、どの料理が生徒に比較的人気がないか等、献立を考える時に工夫して、細心の注意を払っている。栄養士の葉佳紋(イェ・ジャウェン)さんは料理の小さなコツを話してくれた。「苦瓜などは、子供に食べてもらうために、メイン料理にはしません。ピーマンも横に添えるだけです。私たちは子供が食べてくれるような方法で作ります。例えば、好きな物と嫌いなものを同じ料理に入れ、彼らに美味しいものを食べながら苦手なものも一緒に食べてもらうのです」。
数値化して食べ残しをコントロール
教師、生徒、給食提供者の協力の下、食べ残し削減効果が徐々に現れた。「お皿を空にする」運動は先学期の二〇二一年九月から始まって十二月までに、全校の食べ残し量は一トンを下回り、九百キロ余りになった。一学期を百日と計算すると、全校の一日の食べ残しが僅か九キロになったのに等しい!以前の一日三十五キロと比較すると、改善の効果は顕著に現れていた。
その年度の二学期、即ち二〇二二年の一月から六月までの間、更に一学期で三百キロという記録を立て、一日の食べ残し量が僅か三キロという好成績を残した。小学部二十五クラスで、各クラス一日に平均して僅か百二十グラムの食べ残しを出しただけに等しい。
その過程では紆余曲折もあった。全校の食べ残し量が既に一日二十キロまで減っていた頃のある日、給食を終えて、教師と生徒たちがいつものように食べ残しの重さを計ったところ、数字が三十五キロに跳ね上がっていたことに愕然した。驚きのあまり、皆で骨の折れる作業に関わらず、答えを探し始めた。
「結果として分かったことは、あの日はうどんだったのですが、うどんと豆腐は歯ごたえがあり過ぎた上に、比較的大きく切られていたのです」。顔さんの記憶によると、あの日食べ残しが最も多かったのは一年生と二年生で、低学年の生徒はちょうど乳歯から永久歯に生え変わる段階で、咬合力も咀嚼力も比較的弱く、硬めの食材は食べるのが遅く、少なくなるため、食べ残しは自然と増加する、という。セントラルキッチンチームは「うどん事件」の経験を活かして、献立を作る時は、同様の状況が再び起きないようにしている。
「食の安全面では、セントラルキッチンが残留農薬を検出する機器を設置してくれたので、とても感謝しています。農薬を測定し、以前に一部不合格の野菜を返品したこともあり、台湾全土でこのような取り組みをしているところは少ないのです」。姚智化(ヤォ・ヅーファ)校長によれば、同校の給食請負業者は、菜食調理に長けており、幼稚園から高校までの各学年の生徒に必要な栄養を考え、また中学、高校生の夜の自習時間には夕食を提供しているため、仕事量が増えても依然として全力で協力してもらっている。
「厨房はとても配慮してくれています。生徒や保護者から学校の食事がまずいとか量が足りないというクレームは殆ど聞かれません。この点を達成するのはとても難しいのですが、貴重なことでもあるのです」と姚校長が称賛した。
食事後、5年生の感恩クラスの生徒が食缶等を返却する様子。食べ残しの計量と回収が待っている。そのクラスは食べ残し削減の目標を達成し、教室のドアには「お皿を空にする大使」の賞状が掛けられてあった。
食べ残しの計量は毎日給食後の日課で、多くのクラスはいつも食べ残しゼロを達成しているが、少数のクラスは食べ残しがあっても、グラム単位である。
「カーボンフットプリントの検証」児童版
同校小学部は「お皿を空にする」運動を推進し、実際に計量したデータを用いて、教師や生徒たちに食べ残し問題の深刻さを知ってもらい、さらに食事をする人数を報告し、過剰な提供を避け、食を惜しむことを教えている。
この運動はグローバルな食糧問題に正面から取り組んでいる。国連食糧農業機関(FAO)の二〇〇〇年から二〇二〇年の統計によれば、主要な農作物であるサトウキビやトウモロコシ、小麦、米の生産量は五割増加し、二〇一九年、九十三憶トンに達した。生産技術の進歩は食糧の需要をはるかに上回ったが、それに矛盾して、全世界では同時に数億人が飢餓と栄養失調の危機に瀕しているのである。
廃棄される食物の浪費は、食物そのものだけでなく、食物の生産や輸送、保存の過程で発生する資源の消耗も浪費しているのだ。「お皿を空にする」プロジェクト初期の構想と運用方法から見ると、今日で最も話題性のある「カーボンフットプリント検証」児童版とみなすことができ、食べ残しを減らすことは、食糧資源を有効利用することに役立ち、そして関連した温室効果ガスの排出削減にもつながっている。国連十七項目の持続可能な開発目標(SDGs)に照らし合わせると、第十二項目(SDGs12)「責任のある消費と生産」に合致する。これは有意義な善行であり、生活の中に根を下ろした学習だと言える。
この過程で、推進担当の生徒たちは知識が深まり、コミュニケーション能力と自信を強化することができた。食べ残し削減に呼応し、自発的に食を惜しむ運動に参加した全ての生徒たちは、教師たちが丹念に配合した栄養を吸収し、成長過程でより健康になるだろう。
(慈済月刊六九一期より)