編集者の言葉
七月中旬、慈済は能登半島地震被災地において、四回合わせて一万世帯余りへの見舞金配付を終えた。後日、日本在住の慈済ボランティアが、輪島市の被災者から一枚のハガキを受け取った。(上)
それぞれの家族構成に応じた十三万円から十七万円のお見舞金の源は、全世界の人々の愛から来たものである。更に言えば、もっと貧しく不毛な地域の人々も、日々蓄えていた小銭で能登の復興に手を差し伸べているのだ。今回は市や町の公務員の協力の下に受取人の確認をした上で、ボランティアから被災者に手渡された。
能登半島の住民の半数近くが六十五歳以上の高齢者で、会場へ見舞金を受け取りに来た人を見ると分かるが、その多くが一人暮らしのお年寄りか老夫婦である。お年寄りたちは被災後も、住み慣れた土地を離れたがらず、損壊した家で暮らし続けている。八十九歳のお爺ちゃんは、子供には彼らの生活があって、邪魔したくないので、できる限りここに居る、と語っていた。また、八十八歳になる行動が不便なお婆ちゃんは、銀行へ行って現金を引き出したり、手続きしたりするのも容易ではないので、ここで現金をもらえてとても嬉しいと言っていた。
台湾は間もなく超高齢化社会に突入する。日本と同様、地震と台風が頻繁に襲う上、一人暮らしの比例が高いため、今回の地震被害を鑑みて、台湾でも地域防災に備え、災害レジリエンスの向上に努めなくてはならない。
今月号から、国連の持続可能な開発目標(SDGs)シリーズを報道している。主にSDGs2の「飢餓をゼロに」という糧食問題に焦点を当てている。慈済は長年にわたる国際災害支援の経験から見て、食糧危機の問題は海外の貧困地域に多く発生しており、温かい食事或いは米や食料を配付することで、助けが必要な人が基本的生活を維持できるよう支援している。長期的には、農作物の種子を農民或いは地域ボランティアに提供して自給自足を促しており、農民に余力があれば、助けられる側から助ける側になることを願っている。
ミャンマーの貧しい農民は、慈済の縁起である「竹筒歳月」の話を聞くと、同じような取り組みを始めた。彼らは毎日一握りの米を「米貯金箱」に入れて、人助けをしている。この義挙は上人が呼びかけた「腹八分にして、二分で人助け」に応えたものだ。互いに愛の心で助け合い、人間(じんかん)に善の効果をもたらすようにと願っている。
たとえ、経済的に困難であっても、社会が平穏であれば、人も自分も助け合って、飢餓の問題を無くすことができるのだ。もし、社会が乱れ、外部からの支援が困難になれば、もっと辛く苦しい日々を過ごさなければならなくなる。近年はインフレによって支援物資も値上がりしており、慈善支援も困難を増している。このような時こそ、一人ひとりが小銭で大善を行い、僅かでも蓄積して功徳無量にしていく必要がある。
(慈済月刊六九三期より)