地球沸騰時代の共善と防災

編集者の言葉

十一月下旬、二十四節気の「小雪(しょうせつ)」が過ぎ、冬に向かって気温が下がって来るのが感じられる頃、あちこちの慈済会所には、新年を迎える、めでたい雰囲気が漂っていた。毎年のこの時期になると、上人は行脚に出かけ、台湾全土で歳末の祝福を行う他、新たに発心した弟子たちに認証を授け、期待を寄せて激励する。

十月三十一日、強い台風二十一号(コンレイ)が台東に上陸する数日前、上人は既に台北に到着し、多くの慈済人が関渡静思堂で心温かく集っていた。今年の後半、台風三号(ケーミー)、台風十八号(クラトーン)、台風二十一号(コンレイ)が次々に来襲して災害をもたらし、慈済ボランティアは、苦労しながら各コミュニティを回って慰問した。月刊誌『慈済』にも関連レポートを幾つも掲載している。記者も今の少子高齢化が進む社会情勢の下、地域の防災・減災への取り組みと、災害に備える意識を高める宣伝が、一層急務であることを感じている。

十二月号『慈済SDGsシリーズレポート』の重点は、国連の持続可能な開発目標11(SDG11)「住み続けられるまちづくりを」そのもので、この目標の重要項目の一つは、都市と地方のコミュニティの「災害対応の強靱さ」である。これは、慈済の地域における活動運営の重点である。

慈済は半世紀にわたる緊急援助の経験によって、災害発生後の被災者の多様なニーズを深く理解する他、例えば、慰問ケアや経済的な補助、住居の修繕、医療福祉用具等の支援以外に、今では、災害を未然に防ぐために、日常の防災・減災と備えに多大な力を注いでいる。例えば、国民の防災・減災能力の向上を図るために、政府と協力して「防災士」の研修講座を開設し、認証を行っている。これにより、頻発する台風や地震など、コミュニティの災害に対応できる強靱さを高めることができるようになった。

台湾の人口が急速に高齢化するに伴い、青年と壮年の人口が減少し、「脆弱な立場にある人口」の割合が増加している。ここ数年間、慈済基金会も積極的に官民のリソースを結びつけ、地方自治体や国家機構、民間企業と「共善の合作覚書」を交わし、地域を守る防災・救災ネットワークを構築している。しかし、より重要なのは、人々が愛を持つことであり、より多くの人が福を作れば、福の気が保護膜のようになって、災害から護ってくれるのである。

同じく今年の後半に、世界中で深刻な天災や人災が発生し、多くの国で都市が洪水に見舞われたり、森林火災が発生したり、風災に襲われたりした。ボランティアたちは、骨身を惜しまず、遠路はるばる赴いて災害状況を調査し、段階的に援助物資の配付を行ったが、同時に世界で地・水・火・風の四大元素の不調和を感じた。一例としては九月に発生した台風十一号(ヤギ)により、東南アジアの多くの国で合計七百人以上が亡くなった。タイやミャンマーでは台風は上陸しなかったが余波をさんざん受けていたため、被災地の復興には時間が掛かった。

今期の月刊誌『慈済』では、災害後の救援活動に焦点を当てている。刊行される前にも、被災地で配付を続けていたボランティアから送られてきた写真や文章を通じ、読者の皆様に、世界に目を向けて地球規模の災害に関心を持つことで、国連が警鐘を鳴す「沸騰する地球の時代と人類の今置かれた境地」を理解するよう訴えた。

(慈済月刊六九七期より)

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