路地に入り、一人暮らしのお年寄りのために計画を立てる

両側に建てられたばかりの一戸建てに挟まれたレンガ作りの古い家屋は殆ど日差しが届かない。

家主の楊(ヤン)さんは、軽度の認知症が見られるようになってから、徐々に自立した生活ができなくなっていた。
そしてある団体が彼の生活に現れた。

ボランティアが懸命に磨いた結果、褐色の油汚れに覆われていた冷蔵庫が新品のようになった。

また来ます。このユニフォームを着ている人が誰だか分かりますか?」ボランティアは自分のユニフォームを指して笑顔で尋ねた。「慈済ボランティアですね!」と家主の楊さんが答えると、ボランティアたちは疲れを忘れ、嬉しそうに笑った。

町長から台南市新豊区社会福祉センターに、楊さんの家が掃除の手伝いを必要としている、という連絡が入った。二月二十七日、十七人の帰仁区の慈済ボランティアが掃除道具一式を用意して彼の家に向かった。楊さんの家は路地の中にあり、伝統的な一列形式のレンガ造りで、居間は昔ながらの二枚扉で、かんぬきで施錠する必要がある。その家の両側には真新しい一戸建てが建ち、彼の家は真ん中に挟まれて、正午以外は小さな中庭にも日が当たらず、昼間でも灯りをつけないと、家の中はかなり薄暗い。

訪問ケアボランティアの古月英(グ・ユエイン)さんによると、七十歳の楊さんは一人暮らしで、低所得世帯の補助金はもらっているが、近頃、軽度の認知症が見られるという。補助金は、彼が紛失したり浪費したりするのを防ぐために、新豊区社会福祉センターのソーシャルワーカーと町長が管理して支払っている。楊さんは認知機能の衰えで、いつも食事したことを忘れてしまい、近くのレストランに重複して食事を取りに行くことがよくある。このことからも分かるように、楊さんは生活環境の整理ができなくなっている。

外から中庭まで雑草が生い茂り、家の中は薄暗く、居間のテレビはつけているが、リモコンの電池が切れていて、その取り換えもできないため、ずっと付けっぱなしになっているのだ。彼はかつて左官屋で、家の至るところに工具や鉄フレーム、はしごが詰め込まれていた。寝室は日が差し込まないため、とてもじめじめしていた。また、強い尿の臭いが空間全体に充満していた。寝室とトイレが離れているので、彼は寝室で小用を足していると推測される。ボランティアは町長と相談して、トイレの隣にある小部屋を整理して寝室にすることにした。「スペースを調整した方が、彼の日常生活はより安全になります」。

ボランティアの游士印(ヨゥ・スーイン)さんは、室内装飾の設計と施工の仕事に携わっていて、住居改善の専門家である。その日、彼は楊さんのために、わざわざシングルベッドを持ってきた。「寝室にあったベッドは状態が悪く、強い異臭を放っていました。この新しいシングルベッドは清潔で使い勝手がよく、師姐(スージエ)は蚊帳とムシロ付きマットレス、新しい掛布団まで持って来てくれました」。ボランティアの配慮は、自分の家族に対するように行き届いており、決していい加減ではない。

楊さんは清潔で整頓された居間に座り、穏やかにテレビを見ていた。(撮影‧沈雅慧)

相手が喜べば、自分も嬉しい

「わっ、ネズミ!なんて大きなネズミ!」ボランティアが家から要らないものを片付け始めた時、平穏に暮らしていたネズミたちが驚いて瞬時に逃げ出した。大小合わせて十数匹。ゴキブリも巣から逃げ出し、ボランティアたちは鳥肌が立った。しかし、びっくりはしても、彼らは清掃の手を止めることはなかった。

点検後、冷蔵庫はまだ使えるが、スープをこぼしたせいで褐色の油汚れがこびりついていたので、ボランティアは力を合わせて冷蔵庫を中庭まで運び出した。意外にも、長年付着していた油汚れはどんなに擦ってもきれいにならなかった。張淑齢(チャン・スゥリン)さんが雑貨屋まで走って、洗浄剤を買ってきた。ようやく三人の男性ボランティアが協力してブラッシングした結果、楊さんの冷蔵庫は新品のようになった。

軒下の廊下に金網の籠があり、そこに二羽の鳩が飼われていた。「誰かが捕まえてきて、飼ってもらっているのですが、彼には育て方が分からず、かなり死んでしまいました」と楊さんの近くに住むボランティアが言った。「楊さん、相談があるのですが、この二羽の鳩を放してあげませんか?」彼は少し気が進まなかったようだったが、直ぐにうなずいて同意した。彼が自分で鳩をつかんで空中に放り上げると、鳩は自由になった。ボランティアは直ぐ鳩の糞を掃除し、籠を解体して回収した。

薄暗いキッチンから鍋やフライパンなどを外に出して洗い、レンジフードと調理台もボランティアによってきれいになり、バス・トイレも新品のようにピカピカになった。その時、游さんは他のボランティアにシングルベッドを搬入して組み立ててもらい、蚊帳も吊るした。その頃には屋外の清掃も大方完了していた。

ボランティアが楊さんを家の中に招くと、きれいになった部屋を一つ一つ見て回り、「これでいいですか?嬉しいですか?」と聞くと、楊さんは、「はい!もちろん嬉しいです」と素直に笑顔で答えた。

僅か二時間で、ボランティアたちは乱雑極まりなかった家を片付けて清掃し、快適な家に変えた。また、楊さんを取り囲んで、「無量寿福」という歌を歌い、何度も「祝福します。無量寿の祝福」と歌った。楊さんがそれ以降、きれいな環境で暮らして行くよう祝福した。

目の前の光景を見て、游さんは心に感じるところがあり、「奉仕できる人は幸せです。奉仕することで得られる至福の喜びはとても長く続きますが、奉仕するにも因縁が必要です!」 以前の游さんはいつも仕事で忙しかったが、半分リタイアした今、偶然に静思堂の整頓に参加し、実践するうちに大きな喜びを感じた。それ以来、彼は慈善活動に自分の専門を取り入れている。他の人を助けるだけでなく、自分自身を成就しており、それこそ「福は実践する中で喜びを感じる」ことの証である。

(慈済月刊六七七期より)

    キーワード :