修行者の本分

法器を打ち鳴らしながら、大衆を導いて朗誦するのは、修行者の本分である。勤めて学ぶことと集中することは修行の不二法門である。

早朝三時五十分、大地はまだ静まり返り、中央山脈は眠りの中にあるが、静思精舎では「コン~コン」、「コン、コン~コン」、「コン、コン、コン~コン」という魚板(ぎょばん)の音で、朝の静けさを打ち破る。

仏教の朗誦「梵唄(ぼんばい)」は、仏の徳を讃嘆し、身・口・意の三業を清める音である。道場での梵唄は、共に修行する者を導いて、仏法で心を潤す心身の浄化作用がある。

二〇一二年五月三十一日、證厳法師は次のように開示した。「修行者は三刀六槌を学ぶ必要があります。精舍の二衆弟子であろうと、清修士であろうと、法器を学ばなければなりません」。

「三刀」とは包丁、剃刀、裁縫バサミであり、「六槌」とは鐘槌、鼓槌、磬槌、木魚槌、板槌、鉄槌である。鐘、太鼓、木魚、引磬は仏門の基本法器であり、法器を使いこなせるよう学ぶのは修行者の本分である。

精舍の鐘や鼓は本堂の天井から吊り下げられているため、鼓を叩くにはスキルが要る。私たちの大先輩である徳慈(ドー・ツ―)師父(スーフ)は、鼓の音にエコ―を付ける要領を分ち合ってくれたことがある。「内からの力を使って叩けば、音に澄み切った抑揚が付き、リズム感が出てくるのです。三回通して連続で叩いても、疲れを感じません」。

《敕修百丈清規(ちょくしゅひゃくじょうしんぎ)》にこう書いている。「魚は昼夜を通じて目が覚めているが、木に彫られて叩かれることで、ぼんやりしていてはいけないという警鐘を鳴らす意味がある」。木魚は、修行者に昼夜分かたず精進するようにという警鐘を思い起こさせるものだ。何を学ぶのも同じで、「勤める」のみである。心を尽くして稽古することが、法器を上達させる唯一無二の方法である。

「法器はあたかも修行者を象徴しているかのようです」。精舍梵唄のベテランである徳念(ドー・ニェン)師父は、法器習得の重要性を説いた。「三十年余りにわたって修行していますが、今でも毎日学び続けています」。

精舍で法器の指導をしている徳倍(ドー・ペイ)師父は、法器の伝承に力を注いでいる。「木魚を叩く時、朗誦する一字一句の意味を理解しながら、はっきり発音し、朗誦の声に合わせて、木魚の音が鮮明でなければなりません」。

筆者も感概深いものがあり、木魚を上手に叩いた時は、全身の細胞もそれに連れて躍動し、心が集中して清らかになり、喜びに満ちるのである。

二〇二二年二月、《地蔵経》の修行をした時、筆者は法器の地鐘(梵唄のとき、もとより小さな鐘を床の上に置く)を叩いたが、既に経験済みなので、今回はこれ以上練習する必要はないだろう、という驕りが生じた。修行の時間が終わると、徳倍師父が私に、「あなたはリズム感がなくなっていました」と教えてくれた。「慈済が周年を迎えるにあたり、朝の日課で《法華経》を唱える時、地鐘叩きを担当するのではありませんか。こんな調子で、どうやって叩くのですか?一緒に練習しましょう」と師父はとても心配してくれた。

鐘、太鼓、木魚、引磬は仏門の基本法器で、うまく使いこなすにはよく稽古するしかない。

徳倍師父の言葉は、私の心にとても大きな警鐘を鳴らした。そして、師父は二回、練習に付き添ってくれた。一回目はまだ感覚を取り戻せなかったので、何度も繰り返し、録音した師父の鳴らす音を真剣に聞き返した。二回目、師父は遠くから私の練習する音を聞いて、「リズム感が戻りましたね」と言った。

徳念師父が三十年余りの間、「毎日同じように練習する」という言葉を思い出した。自分はまだ初心者だというのに、驕りが生じたのである。実に懺悔すべきことであり、警鐘を鳴らされたのである。模範となる人が側にいるということは、精進する力になる。その機会を逃してはならない。

證厳法師が懇ろに念を押したことがある。「私たちは学ばなければならないことがとてもたくさんあります。時間を無駄にせず、しっかり学ばなくてはいけません。今日学ばなければ、明日後悔します」。

法師の丁寧な教えと先輩師父の指導、伝承によって、後輩の私たちは、梵唄が修行者に与える意義の深さを理解することができた。法器を鳴らす時、プレッシャーがかかっても、大衆が敬虔で恭しい心をもって、諸仏や菩薩の前で発心立願できるよう導けば、身・口・意を守らせることができるのである。これはなんと殊勝な縁であり、なんと喜ばしいことだろう。

できなかったことができるようになる過程を経て、各自が責任を担って伝承する責任があることが理解でき、新米にバトンを渡すことができるのである。法器が受け継がれることは、同時に仏法の法脈も受け継がれていくことを象徴している。全ての本分をしっかりこなすことは、即ち、仏教の正法を引き継いで、広めることに他ならない。

(慈済月刊六八一期より)

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