慈善志業はインフレや気候変動、国際間の紛争等に直面しても、慈済が約束したことは実行し続けるが、時と共に進歩し、AIを活用するなどして、より多くの人の助けになりたいと思っている。
ゼロエミッションへの取り組みをもっと積極的に進める必要がある。
というのも、地球が永続しなければ、国家も社会も組織も永続できないからである。
二〇二四年は、慈済にとって非常に忙しい一年となっています。慈善志業の重点は、證厳法師の「仏陀の故郷であるネパールとインドへの恩返し」の実践です。一方、新たに若者のボランティアを募って養成し、更なるゼロエミッションの推進と組織のガバナンス強化にも取り組まなければなりません。
二〇二三年を振り返ると、地球の温暖化や頻繁に起きる天災、そして戦争、エネルギー危機、食糧危機、インフレ等々、数々の試練に見舞われました。このような環境で、私たちはやるべきことを、以前と変わらず実践してきました。
世界各国の慈済人の協力に感謝しています。昨年、慈済が支援した国と地域は百三十三に達しました。学校の支援建設は十七の国と地域の二百五十四カ所で、大愛恒久住宅の支援建設は、十八の国と地域の二万二千戸余りになりました。台湾では、深刻なコロナ禍の後、昨年から大規模な活動が再開し、延べ千四百万人余りのボランティアが動員され、年間を通して恩恵を受けた人は延べ二千八百万人余りでした。昨年度の基本給で計算すると、慈済人の無償奉仕は百十四億台湾元に達したことになります。
昨年は地球の有史以来、最も暑い一年でした。世界各国が国際的に協力し、平均気温の上昇を摂氏一・五度以内に抑えて、地球に永続の機会を残そうとしていますが、昨年既に一・四八度上昇しています。今後も地表温度が上昇すれば、災害は更に起こりやすくなるでしょう。二〇二三年スイスでの世界経済フォーラムで発行された『グローバルリスク報告書』は、極端な気候や社会二極分化、国際間の紛争を包括していますが、その中の「今日の危機は明日の災難」という文章は、仏教の「菩薩は原因を畏れ、衆生は結果を畏れる」という考え方とほとんど一致しています。
もし地球が永続できなければ、国家も社会も組織もどのようにして永続できるでしょうか?これも、慈済がゼロエミッションによって気温の上昇を抑える取り組みを推し進めている理由です。慈済が選定した十の連絡所の温室効果ガスの排出に対する調査は終わっており、結果が出てから直ちに削減する方向で努力を始めています。慈済は、台北にある複合式活動スペース「植境プランタリウム」に、デルタ電子のエネルギー管理システムを導入し、CO2の排出と電力の使用、電気代を適切に管理し、改善しています。台湾は二〇二四年から炭素税を導入し、一トンのCO2排出につき、三百から五百元(約千四百〜二千二百円)の税金を掛ける予定ですが、これは世界的な趨勢と言えます。
ゼロエミッションへの努力は、地球永続の促進だけでなく、慈済宗門の永続も推進させ、時代と共に進めなくてはなりません。人工知能AIが各方面に導入されているように、慈済の慈善志業も当然影響を受けるでしょう。影響を大きく受けた産業では倒産する企業も出ている故、助けが必要な人が増える可能性があります。世界的な慈善活動の発展も、AIを活用しなければなりません。もう一つの問題はインフォデミック(偽情報の拡散)です。誤情報やフェイクニュースが、世界的な危機の第一位に挙げられ、人的災害が自然災害よりも酷くなる恐れがあります。
以前から今に至るまで、慈済は全て災害に支援の手を差し伸べて来ました。未来の展望としては、一層科学技術を良い方面に活用して、必要としている人に使うと共に、證厳法師が私たちに言い続けてきた、「敬虔に菜食し、環境保全を重視する」ことを着実に行うことです。私たちの「弘法利生」の精神は、「仏教の為、衆生の為」にあり、一緒に法師の後について、人心の浄化と平和な社会、災害のない世の中になるよう励んでいきます。(三月三日グローバルボランティア精進日の講演より)
(慈済月刊六八九期より)