慈善の仕事は人に感動を与えることが大切です。空腹の時にはお腹を満たし、支援を提供して暮らしを安定させるのです。
ですから、皆さんの清らかで無垢な智慧を結集し、支援の方法を考えるのです。智慧があってこそ、この世に幸せをもたらすことができます。
七月六日、嘉義に初めて上陸した台風4号(ダナス)は、凄まじい勢力で、屋根瓦をも吹き飛ばした後、大雨が降り続き、不便で困難な生活が続いています。一つの台風で、こんなにも多くの人を困難に陥れているのです。私たちは天を敬い、地を愛し、更に世の人々に関心を寄せて、慈善活動を全面的に開始し、貧富を問わず、すぐにでも皆で被災者の心を落ち着かせ、彼らの生活を取り戻させなければなりません。
今回の雲林、嘉義、台南一帯の災害では、南部の人たちが集まって被災後の作業を受け持ってくれ、それぞれの地域で団結していることに感謝します。それはよく言われるように、「不請の師」であり、台湾の慈済人は皆それができるのです。自分も同様に被災していても、それを後回しにして、一緒に他人の困難を先に解決してから、自分の家のことを処理しに行くのです。ですから、慈済人の心は真の菩薩心であり、愛で以て奉仕し、法縁者の間でもお互いに関心を寄せ合い、大切にし合わなければなりません。
七月初め、南部へ行脚しましたが、慈済人がお互いに関心を寄せあった話を聴いて、いつものように安心しました。さらに、毎回風災の後の緊急援助で、温かい食事を提供することは、最も心を温ためます。皆それができたのです。初期の支援では、それぞれの慈済人の家から電気釜を持って来て、温かい食事を作っていました。皆が真摯な心で、社会に尽力していると感じました。
台湾でも世界でも、災害が発生した時、私はいつも先ず、皆の無事を尋ねます。無事であれば、状況を理解し、関心を寄せて、どうやって助けるかを検討します。慈善機構は社会のニーズに応えるだけでなく、ましてや慈済は「無縁大慈 同体大悲(無縁の人に大慈をかけ、相手の身になって悲しむ)」精神を持っており、何の関係もなく、血縁者でも知人でなくても、苦しんでいる声を聞けば、直ちに慰め、寄り添い、支援しなければなりません。これが菩薩であり、その悟りを開いた有情が即ち、「覚有情」なのです。
慈済の慈善行為は、直ちに支援するだけでなく、相手が感じ入るようにしなければなりません。空腹の時はお腹を満たし、配付したお金や提供した援助で、彼らの心を落ち着かせ、生活を安定させるのです。表面的で、象徴的なものであってはいけません。そこで必要なのが、皆が結集して、清浄無垢な智慧でもって実行する方法を考えるのです。智慧があってこそ、人々に幸福をもたらすことができるのです。
ですから、よく「学」と「悟」と言っているように、日頃から一途に学び、どうすれば菩薩になれるかを学ぶのです。どうやって一歩も間違わずに「覚有情」になるかです。一旦何かが発生すれば、智慧で以って直ちに投入するのです。これも成長の因縁であり、私たちに与えられた試練なのです。
今の時期は、台湾の風災だけでなく、世界中で四大不調が起きています。現代の危機は非常に大きく、人と人の間で、もし不和があれば、科学技術も発達しているため、戦争による被害は、以前よりも深刻になり、取り返しのつかない人間(じんかん)の悲劇に発展してしまいます。
心ではとても心配するのですが、役に立てなくて無念さを感じるため、直ちに奉仕しなくてはならないのです。普段より防災に努めると共に、それ以上に人心の浄化が重要となってきます。人心が浄化されれば、正しい方向に行動でき、行動に規律があれば、雰囲気がとても和やかになります。もし人間(じんかん)の生活に規律がなければ、乱気流を形成して災難をもたらします。
仏陀が言われたように、人間(じんかん)は火宅の如く、衆生はまるで火宅の中で遊び呆ける子供のように無知で、物質欲に駆られ、たとえ大地を破壊しても求め続け、意に沿わなければ、癇癪を起こします。無明は火花のように絶えず散らし、その数が多くなると業の火になってしまいます。
衆生には元々如来の智性が備わっており、仏と同等の大慈悲心を持っています。しかし、何世も輪廻するうちに、益々仏性から遠ざかってしまいました。仏陀はこの世に来て、迷いから転じて悟れるよう教育しました。それには学ぶ必要があり、群衆に交じって学び、苦を見て福を知り、菩薩心を起こして苦難を取り除いてあげるのです。台湾はこの数十年間、大方平安ですが、災害は私たちに警告しており、慎重に大自然の教えを受け入れ、敬虔な心で平安を祈らなければいけません。誠意とは生命を愛護し、大切にすることであり、できる限り菜食することで、その誠意を表すのです。衆生の肉を口にすることを忍びなく思い、敬虔に斎戒を守り抜くのも、大愛を表す方法なのです。
そして、人々に愛を呼びかけ、共に善行するのです。愛を無限大に拡げ、欲望を抑え、怒りを抑えれば、この世は瑞気に満ち、平和で、災難はなくなるでしょう。心して精進してください。
(慈済月刊七〇五期より)


