学校の秘密基地─静思閲読書軒

森に囲まれた台南市竹門小学校にある静思閲読書軒では、放課後によく学生が本を選ぶと二階の読書スペースに集まって、一緒に読書する姿が見られる。(撮影・黄筱哲)


「静思閲読書軒」第一号は、五年前、屏東高泰中学校に設けられた。それ以来、今では二百以上の学校に設置されている。そこは一人の時間を楽しみ、クラスメートと一緒に読書する場所であると同時に、先生と生徒が打ち解けて対話できる場所でもある。

「静思閲読書軒」第一号は、五年前、屏東高泰中学校に設けられた。それ以来、今では二百以上の学校に設置されている。そこは一人の時間を楽しみ、クラスメートと一緒に読書する場所であると同時に、先生と生徒が打ち解けて対話できる場所でもある。

「十五分間で、前回借りた本にもう一度目を通して、一枚目のワークシートを完成してください」。新北市深坑中学校の九年生クラス。国語教師の許盈盛(シュー・インシェン)さんは、グループに分かれて討論するよう、生徒に指示した。

「情緒の脅迫」、「この世に理想的な親はいない」、「自主学習の上達法」など、学生たちがそれぞれ異なった本を選んだ理由を、担任教師でもある許先生が話してくれた。人間関係に悩んだり、家族とよく喧嘩したりしている生徒もいれば、学習意欲が旺盛な生徒もいて、それぞれの性格もその境遇も同じではないのだそうだ。

学生は次々とワークシートに向かい、「書名を見た瞬間に頭に浮かんだ問題」や本の中にあった「名言」を書き写しながら、「読み終わったか。面白かったか。一番好きなフレーズはどれか」について、面白そうに討論し始めた。

「各グループで一番好きな本を選んで、本を選ぶ四つの原則(TIPS)に合致しているか良く討論した上で、代表者を選んで壇上で発表してください」。十分間の討論の後、皆で互いに良い本を推薦して意見を述べ合い、その後にそれらを分析した。

「ちょうど思春期の私たちは、この本を参考にして、親との意思の疎通を学ぶことができます」。

「この本は、日常生活の中で多く発生する情緒問題や、私たちが当惑している時にどうやって勇敢に他人を拒絶したらいいかを教えてくれます」。

「コロナ期間はオンライン授業になったので、なかなか集中できませんでしたが、ネットツールを使って自己学習の計画を立てることもきるのです」。

あちこちで拍手が起こった。この場所こそが、学校内の「静思閲読書軒(慈済の提供する図書室)」だった。

2019年、高雄桃源中学校で閲読書軒の使用が始まった。蔡青児さんは、子供たちが2009年台風モラコット被害を特筆した本を読みながら回顧するのを見ていた。(撮影・陳玉萍)

簡素で多機能なスペース

静思閲読書軒は、静思書軒と社会の有志たちが協力して作り上げた場所で、現在台湾では二百あまりの学校に設置されている。読書活動を学校に送り届けるという善行の始まりは、二〇一六年に遡る。静思書軒の運営長である蔡青児さんが同僚とボランティアを連れて、慈済災害支援プロジェクトである希望工程の中で、支援建設をしていた屏東高泰中学校に本を寄贈した時、当時の印永生(イン・ヨンシェン)校長から、「学校に静思書軒を作ってほしい」という願いが寄せられたのだ。

「学校の近くは農地や牛舎ばかりで、人が少なく、例え家賃を払わなくても、存続できるだろうか…」と蔡さんは再三考えた。しかし、何事も方法はあるはずだと思い、何回も討論した結果、空いた教室を読書ルームとして静思閲読書軒に改装し、本を提供することにした。実業家の陳致遠(チェン・ジーユエン)さんはこのことを知って、全力で支援し、静思閲読書軒をサポートした最初の人となった。「善事は皆で一緒にやりましょう」と呼びかけた。

都市部から地方、離島、更生施設にある学校まで、学校側に意欲があって、生徒たちに学習環境を提供する気があるなら、私たちは喜んで協力したいと蔡さんは語ってくれた。

生徒数が一千六百人余りもいる台中市清水小学校は、證厳法師の母校である。元来の校舎は老朽化して、安全を考慮して取り壊すことになった。再建後は約三百平米余りある図書館を併設し、卒業生である慈済ボランティアの協力のもとに、今の時点としては台湾で最大の静思閲読書軒がそこに設けられた。

清水小学校の楊育欣(ヤン・ユーシン)先生によると、読書の授業では生徒たちに本の読み方を指導し、生徒たちが読書後の感想文を書くと、ポイントを集めて賞品をもらえるようにしているそうだ。また、学校もしおりを作ったり、物語を語るコンクールを催したりして、生徒たちに読書を奨励する雰囲気を作り出そうとしている。

「ある学習障害の子供が、自分は『静思語』を読むのがとても好きだと皆に分かち合ったことがあります。字数は多くなく、難しくもなく、理解できる語彙が増えた上に、深く意味まで考えるようになったのです。試しに静思語の意味を聞いたら、懸命に説明しました」。

あまり関心が払われない、「山でも町でもない」地域にある、台南市東山中学校にも静思閲読書軒が設けられた。蔡さんによると、校長先生と教師たちは閲読書軒の参入に積極的で、生徒たちが良い本を読んで、読書を通して外の世界をもっと知ることに期待しているそうだ。

東山中学校はテコンドースポーツで有名なので、多くの寄宿生がいる。思春期の子供は活発で、テコンドーの練習が終わっても、落ち着いて宿題をするのが難しい。夜の自習時間はスマホで遊ぶことが禁止されており、クラスメートの勉強を邪魔することはできない。十代の若者が最も嫌うのは、退屈であることだ。そんなときに、本棚から好きな本を一冊手に取って読んでみれば、知らないうちに読書する習慣が身につく。

同様に遠隔地である屏東県の萬丹小学校では、慈済ボランティアの潘機利(パン・ジーリー)さんが、母校と故郷への恩返しの気持ちで、書軒の設置を引き受けた。彼の学生時代は、授業以外に知識を増やす読み物があまりなかったので、後輩たちに良い本を読んでもらうことで、勉強や人付き合いで問題に遭遇した時、考え方を変えて、引き続き前進できるようになってほしいと願うからだ。

「子供たちが静思閲読書軒に入った時、驚きの表情になる子もいれば、そこに入ると落ち着くと言う子もいます。周りが善い人で、次世代も善くなってこそ、自分もよくなるのです。知識は力であり、知識は読書から得るものです」。

遠隔地に比べて、都会の子供は良い本を読むチャンスは多いが、実際に読書する子は本当に少ない。読書スペースの確保と雰囲気を作り出すことがかなり重要だと蔡青児(ツァイ・チンエル)さんが言った。

新北市中和中学校の総務主任・陳芝仙(チェン・ジーシエン)さんによると、図書館は七年生(中学一年生)の教室に近いが、八、九年生(二、三年生)の教室からは遠いので、教師たちは広い校内に「第二の読書スペース」を設けることを思いついた。そこで、静思書軒のスタッフと慈済ボランティアが協力して、ほとんど使われていない校長室に隣接する学校史資料室を、明るい読書スペースに変えた。

「この静思閲読書軒ができてから二年あまり、子供たちはよく休憩時間の十分か十五分間にここで本を読んでいます。七年生の時間割には毎週決まった読書の授業があるので、教師も時間になると生徒を連れて来ます。高校進学の受験を控えた九年生の生徒が、この静かで快適なスペースで勉強に集中しているのをよく見かけます」。陳主任は嬉しそうに言った。

台中市清水小学校の古い校舎が再建された後、台湾で最も大きい静思閲読書軒ができた。中には再生素材を使った椅子や机のほか、精選された蔵書がある。(撮影・蕭耀華)

編集長が厳選し推薦する本

静思閲読書軒のレイアウトは、本選びと同様に特色がある。机と椅子はジンスー人間会社の再生素材で作られた「福慧テーブルと椅子」を使用しており、折り畳み式で収納が便利である。異なったニーズに応じて、多元的に利用できるスペースをより多く確保している。

蔡さんが説明を付け加えた。「これらテーブルや椅子にはストーリーがあるのです。二〇一六年の二〇六台湾南部地震

被害支援で、慈済が『キッチンカー』を出動させて炊き出しを行った時、福慧テーブルと椅子を置くと、深夜食堂が店開きしたような光景が現れました。救助隊員もそこで休憩して食事をすることができて、ストレスの解消になったのです」。

閲読書軒の壁には、静思語と、證厳法師の「年年三好三願」という言葉の掛け軸が掛かっている。一つの言葉は人に影響を与え、環境は無言の中に善の影響をもたらすと蔡さんは思っている。

精選された本は約五百冊あり、半分が静思人文と慈済伝播人文基金会の出版物で、残りの半分は各出版社の社長と編集長に選んでもらったものである。内容は主に志を激励するもので、医師が患者を救い、スポーツ選手が夢を追い、企業家がゼロから始めて奮闘する話などである。「ここに来れば、間違いのない本選びができることを子供たちに知ってほしいのです」と蔡さんが言った。どこの書軒も使用開始から一年後に、寄贈団体が再び学校に戻って新書を補充するようにしている。

この数年間、蔡さんは都市部と地方の資源の格差や学生たちの読書に対する情熱に気付いた。そこで、彼女は、もっと多くの子供たちが読書を好むよう、積極的に学校と一緒に取り組んでくれる縁を開拓している。
読書スペースの設置と本の寄贈によって読書活動を推進する事業は、政府でも民間でも行われている。例えば、玉山ボランティア基金会は台湾全土の遠隔地の学校に百六十八もの「玉山図書館」を建てた。教育部国民と就学前教育署も五年前から、六百校余りに空きスペースを活用させる補助金を出しており、「学校と地域の読書ルーム」を設置した。また、新北市政府は、「移動図書館」を遠隔地の学校に走らせ、子供たちに読書する機会を増やしている。二〇一七年以来、静思閲読書軒は、台湾全土の多くの学校に設置されているが、それ以上に、教師と生徒、そして地域住民の心の桃源境にもなっている。

(慈済月刊六七二期より)

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