大愛喬遷の喜 美しさで法を伝える

大愛テレビ局、出版印刷、デジタルメディアなどのマスメディアが、2023年、現在のビル(写真右)から隣に建設された新しい志業パークへ遷る。(撮影・許俊吉)

関渡平原に佇む慈済人文志業センターは、二〇二三年に関渡静思堂へ遷る。

近隣の企業とパートナーシップを築き、互いの強みを組合せ、持てる豊富な「科学技術」と「人文」に「芸術」のエネルギーを融合させていく。

台北市に広がる関渡平原、二〇二三年にそこで開所式を迎える関渡静思堂は、「慈済人文志業センター」の新居でもある。世の中の真善美を発信するという使命を持った「人文の宝塔」として、地域の道場と融合し、地域に新しいエネルギーを注ぎ込むことに期待している。

この緑豊かな環境の中にある斬新な建築は、遠くに観音山や淡水河の河口を望み、春には雨季の恵みで稲穂が青々と育つ場所である。この地域には「グローバル規模」の企業が多く隣接している。パソコンと周辺機器を製造するエイスース、ペガトロン、医療人文使命を携えたガン治療権威の和信がんセンター病院、そして台北献血センターなどがある。慈済関渡志業パークは、元々台湾プラスチックの社員寮があった場所で、二〇〇五年、パーク内に慈済人文志業センタービルが開所した。それも国境を超えて世界に広がる、ボランティアの無私の大愛の心で建てられたビルである。

二〇二三年の元旦、大愛テレビ局は設立二十五周年を迎える。局内にはCDVデジタルメディア、インターネット放送、雑誌の出版部門などマルチマスメディアがあり、人文志業センターを形作っている。この度の移転が機縁となって、周囲の企業と共に「公益共同体」へと邁進する。

この人文の宝塔は、慈済の人文志業本部であり、この地に根ざしたハイテクや医療機関の人々が友人や隣人として、お茶を楽しんでもらうのに最適な場所でもある。そして地域の人々が生涯学習のために学ぶ場として、4月からさまざまなコースが開講されることになっている。

生活の美学が気風を形作る

良きパートナーである近隣企業共々が参加する「関渡人文芸術ウィーク」が、トップバッターとして二〇二二年末に登場する。様々な芸術と文化関連のグループが招かれて出演すると共に、ベジタリアンマルシェなど市民参加のイベントも行われる。

「関渡テクノロジー工業区の面積はそれほど大きくはありませんが、ここで会社を興し、慈済人文が文字と映像を伝えるだけでなく、地域社会に美と善を広め、人文気風に溢れた生活を提案していきたいのです」。慈済人文志業センターの合心精進チーム代表・姚仁禄氏は、地域生活の品位を高め、特色ある関渡地域人文として発展させたいと熱を入れて語った。将来、この「関渡人文芸術ウィーク」が毎年の恒例行事となり、季節ごとにマルシェや記録映画展が開催されるようになればと願っている。

メディア部門を管理している姚氏は、元々著名なインベンターであり、設計士でもある。長い間「台湾には美的感覚が必要である」という考えを抱き続けていた。学生時代の恩師である台湾建築学の巨匠・漢宝徳教授の言葉にあるように、一人でできるのは、依頼された仕事だけであり、美的感覚を身につけることで初めて自分のスタイルとなる。そして、その美的感覚とは、姿形の美しさではなく、一種ライフスタイルの形成であり、日常生活に根ざした素質である、と解説を補足した。

美的感覚を育むということは、殺生しないことや環境生態に関心を寄せて飲食習慣を改めることである。また、大地の恵みを大切にしたり、回収資源から再製することであり、道に咲く草花、行き交う人々を大切に思うことでもある。言うなれば、このような生活から美を感じとる経験は、物を使う時に感謝することから生まれるものであり、消費行為の利便性や効果だけからは生まれない。

そこで、関渡静思堂には菜食レストラン「常不軽(じょうふきょう)食堂」とビーガン商品を売るコンビニが設置される予定である。その他、もっと若者向けで、親しみ易くなった「静思ブック&カフェ2・0」は、より図書館に近い書店となっている。

志業パークに入ると、両側にユカンやモクビャッコウ、シトウなどの植物が植えられた人文薬草園があり、「大地の草木は全て薬」という概念が具現化されている。しなやかで目立たないこれらの薬草は薬になった時、とても強い治癒効果を発揮する。

證厳法師は「環境教育」をとても重視している。環境の雰囲気は気がつかないうちに、人の心と行動に影響を与えるからだ。人文志業センターが入る関渡静思堂も、地域のためにこのような環境雰囲気を形作っている。

関渡志業パークは、これから地域社会に様々な形で慈善、医療、教育、人文、科学技術、芸術の面で「共に善行して活動する」ことで影響をもたらしていき、その躍動をさらに高め、さらに遠くへ広めたいと願っている。

覚者は世を守り、愛おしむ

高さ五・五メートルの仏像「宇宙大覚者」は、二〇二二年十二月に広場に安置された。塀のない志業パークを通りかかる人は誰でも、彫刻によって作られた景観と芸術的な美しさ及び仏教精神を兼ね備えた現代仏像を見て取ることができる。

姚氏によると、この屋外仏像は、二千余年前にインド北部に住んでいたアーリア人を参考にし、ガンダーラ様式で推測して設計されており、宇宙大覚者の容貌とスタイルを一層たおやかで親しみやすいものにしている。

人間(じんかん)仏教の実践者として、慈済は生活の中に仏教を根付かせることを強調しているのは、菩薩はこの世に存在しているからだ。法師の仏像に対する考え方は、その佇まいに親しみを抱いてもらい、現代の人々に受け入れられ、現実離れしないような形にというものだった。また、「宇宙大覚者」は人々が参拝するために作られた像ではなく、仏陀の精神世界を表現するものであり、地球を守り、人々を救うことを望んでいる。

法師が心に描く仏陀。それは、このように天地の理に目覚め、宇宙という空間にたたずみ、左手で智慧を象徴する托鉢の鉢をかざし、右手は地球の上にそっと差し出し、人々を思いやる慈悲を表している。それは開かれた無限の心で愛おしみ、人間の無明によって汚染されてしまった地球を浄化していく。

「私たちはこの世に生活している以上、地球と人間(じんかん)の事相を認識しなければなりません」。證厳法師の覚悟や仏像に対する見方は、人間(じんかん)の生活に根ざしており、仏法は仏陀の真理に対する悟りから来たものである。仏を拝んで守ってもらうのではなく、自分の智慧を啓発すると同時に、人々がそれを読んだ後に心が喜びに満ち、誰もが仏心を携えていることを悟ることを期待している。

この二十数年間、慈済人が感謝の心で愛しみながら、この土地を活かしてきたが、これから一層広く良縁が結ばれていくことを願っている。地域のパートナー企業と善、美、友好の絆で結ばれて交流が深まることで、それぞれが持てる「科学技術」と「人文」の中に、芸術というエネルギーを取り込んでいきたい。二〇二三年の新春の始まりが、慈済人文志業の新しいマイルストーンであり、関渡の人文と美善を携えた地域社会の新たなスタートである。あらゆる分野の団体が参加することを歓迎したい。そして、共に祝い、共に前進しよう!(参考資料・慈済人文志業影響拓展センター)

(慈済月刊六七四期より)

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